エフテック[7212]は、ホンダとの強固な取引関係に支えられる部品メーカーとして長年の歴史を持ちます。
足元の業績には不安もあるものの、PBRの低さに象徴される株価の割安感、長期保有者に優しい株主優待制度、そして継続的な配当実績を踏まえると、長期的な資産形成を目指す投資家にとっては、じっくりと保有する価値のある銘柄と言えるでしょう。
本記事では、最新の株価指標や会社概要、優待内容を整理したうえで、プロの視点から長期保有を前提とした投資判断を掘り下げていきます。
株式情報
割安度 | 安全度 | 値動き傾向 | ||
PER | PBR | 自己資本比率 | ROE | 信用倍率 |
-倍 | 0.17倍 | 29.1% | 3.18% | 296.86倍 |
優待&配当 | ||||
総合利回り | 配当利回り | 優待利回り | 権利確定月 | 優待最低取得額 |
5.16% | 4.16% | 1.0% | 3月 | 48,100円 |
編集部おすすめ度 | 理由 |
短期的な値上がり益を期待する銘柄ではなく、現在の割安な株価水準を利用して、じっくりと時間をかけて保有し、配当と優待によるインカムゲインを受け取りながら、業績回復とともに株価の見直しが進むのを待つ「長期・安定志向型」の投資スタイルに適した銘柄です。 |
会社情報

エフテック株式会社は、1947年7月1日、もともとは金属玩具の製造からスタートしましたが、1955年11月に有限会社福田製作所として法人化。
やがて、1959年には本田技研工業(ホンダ)との取引を開始し、二輪車向けの部品加工へと事業をシフトしていきました。
1964年には社名を福田プレス工業へと改め、四輪車用部品の製造にも本格的に参入。
その後の成長とともに、1988年12月には現在の「エフテック株式会社」へと社名を変更しました。
同社の強みは、自動車の足回り部品を中心とした製品群にあります。
フロントサブフレーム、リアサブフレーム、サスペンションメンバー、ロアアーム、リンク、トレーリングアームなど、走行性能や安全性に直結する重要部品を多数手掛けています。
また、アクセルペダルやブレーキペダルなど、ドライバーの操作に関わるコントロール部品の分野でも高い技術力を誇ります。
開発から製造、品質保証までを一貫して行える体制を整えており、顧客ニーズにスピーディーに対応できるのも大きな強みです。
本社は埼玉県久喜市に構え、国内には久喜事業所、亀山事業所(三重県)、テクニカルセンター(栃木県)などの拠点を保有。
ホンダをはじめとする主要自動車メーカーに向けて、安定した供給体制を築いています。
さらに、グローバル展開にも力を入れており、1986年にカナダでの現地法人設立を皮切りに、アメリカ・メキシコ・中国・フィリピン・インドネシア・タイ・インドなど、世界中に生産拠点を広げています。
取引先には、本田技研工業はもちろん、ゼネラルモーターズ、トヨタ自動車、日産、スズキ、ダイハツ、いすゞなど、国内外の大手メーカーが並びます。これらの企業からの信頼は、長年積み重ねてきた実績と技術力の証でもあります。
同社が掲げる4つの競争力―「研究開発力」「生産技術力」「国際競争力」「人間力」―は、すべてが同社の根幹を支える柱です。
研究開発では、EVや次世代モビリティへの対応も見据えた先進的な開発を進めており、品質とコストパフォーマンスの両立を追求した生産体制も構築済み。また、海外拠点との連携によるグローバルな対応力も評価されています。
これからのエフテックは、「人とくるまのより良い未来」へと挑戦を続けます。
日々変化するモビリティ社会の中で、新たな価値を創出し、サステナブルな社会の一端を担う存在として、確かな一歩を踏み出し続けています。
株主優待情報

エフテックは、株主への感謝の意を込めて、年1回(3月末)に株主優待を実施しています。
株主優待の内容
エフテック株式会社は、株主優待制度として、継続保有期間と保有株式数に応じてQUOカードを贈呈しています。
保有期間が長くなるにつれて、保有株式数に合わせて贈呈されるQUOカードが増えます。
保有株式数 | 継続保有期間1年以上 | 継続保有期間3年以上 | 継続保有期間5年以上 |
---|---|---|---|
100株以上 | 1,000円分 | 1,000円分 | 1,000円分 |
300株以上 | 1,000円分 | 2,000円分 | 2,000円分 |
500株以上 | 1,000円分 | 2,000円分 | 3,000円分 |
権利確定日と発送日
権利確定日、発送日、優待の有効期限は次の通りです。
権利確定日 | 発送日 | 有効期限 |
---|---|---|
3月末 | 6月下旬頃 | 無し |
注意事項
- 株主優待を受けるには、1年以上の継続保有が必要です。
- 継続保有期間の判定は、毎年3月31日および9月30日の株主名簿に同一の株主番号で連続して記載されることが条件です。
編集部からのおすすめ情報
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株式情報にみる分析
エフテック株式会社は、自動車部品業界において長年の実績を持つ企業であり、特にホンダとの強固な取引関係に支えられながら、グローバルな製造体制と技術力を武器に事業を展開しています。
投資対象としての評価を行う際には、短期的な株価の上下に左右されるのではなく、10年以上のスパンで企業の成長性や安定性を見極めることが重要です。
まず、株価の長期チャートを振り返ると、エフテックの株価はリーマンショック後の2009年から一時的な上昇を見せたものの、以降は横ばいから下落基調に転じています。
とくに2020年以降のコロナ禍では、一時的な落ち込みを見せた後、やや持ち直したものの、現在も全体的には低位圏で推移しています。このことから、株価は長期的に見て下落トレンドにあると判断できます。
その背景には、自動車業界全体が大きな転換期を迎えていることが挙げられます。
電動化、カーボンニュートラル、CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)といった変化に直面する中、エフテックのような自動車部品メーカーも柔軟な対応が求められており、従来型の内燃機関に依存した構造では成長が鈍化しやすい状況です。
一方で、同社はこのような環境変化を見据えた設備投資や研究開発も進めており、EV向け部品や軽量化技術などの分野での強化も図っています。
北米・アジアを中心とした海外展開も進んでおり、為替や各国の景気動向に左右されるリスクはあるものの、将来的な需要の底支えとなる可能性も十分にあります。
財務面で見れば、自己資本比率はやや低めであり、経営の安定性という観点では多少の不安もあります。
ただし、過去には安定的な黒字経営を維持していた実績があり、配当も継続して出している点から、これ以上の極端な業績悪化が続く可能性は低いと見ています。
また、現在の株価水準はPBRベースで見るとかなりの割安感があり、市場からの期待値が低く織り込まれていることを意味します。
これは逆に言えば、今後の経営改善や業績回復があった場合、大きな株価上昇余地を秘めているとも言えます。
PERは赤字予想のため現在は参考になりませんが、過去においては極端に高い水準ではなく、業績が回復すれば再び割安株として注目される可能性があります。
信用倍率が非常に高い水準にあることも、個人投資家の注目度が比較的高いことを示しています。
ただし、この点は相場変動の激しさや需給の歪みを招くリスクにもつながるため、慎重な視点も必要です。
総じて言えるのは、エフテックは「今すぐ大きなリターンを狙う銘柄」ではなく、「割安な水準で仕込み、中長期での回復と株価上昇を期待する銘柄」であるということです。
特に、自動車業界の構造変化にどう対応していくか、そしてホンダを中心とした既存顧客との取引をどれだけ維持・拡大できるかが、将来の評価を大きく左右します。
現在の株価は純資産に対して大きくディスカウントされており、長期投資家にとっては「逆張り」の好機となるかもしれません。
もちろん、財務の健全性や業績回復の兆しを確認しつつ、慎重な判断が求められますが、長い目で見た際に報われる可能性を秘めた銘柄と評価できます。
株主優待にみる分析
エフテック株式会社の株主優待制度は、長期保有を前提とした設計がなされており、優待銘柄としての魅力は「安定した実用性」と「継続保有によるリターンの向上」にあります。
まず、エフテックの優待内容をあらためて整理すると、毎年3月末に100株以上を1年以上継続して保有している株主を対象に、QUOカードが贈呈されるというシンプルな制度設計です。
QUOカードはコンビニ、ドラッグストア、書店、ファミリーレストランなど、幅広い業態で利用できるため、日常生活における使い勝手が非常に高く、現金同様の価値がある優待といっても過言ではありません。
さらに特筆すべきは、2020年12月24日にエフテックが実施した株主優待制度の「改良」です。
それまでは保有年数による段階的な優遇はありませんでしたが、この改定によって「継続保有期間」に応じたQUOカードの金額増加が導入されました。
具体的には、1年以上、3年以上、5年以上と、保有期間が長くなるほど優待額が増える構造に見直されたのです。
この改定により、株主に対して「持ち続けるほど報われる」という明確なメリットが提示されたことは、投資家の中長期志向を後押しする大きな要因となりました。
エフテックとしても、株主構成の安定を図り、短期的な株価変動に影響を受けにくい体質を目指す狙いがあったと考えられます。
また、QUOカードのように生活に密着した優待は、日々の支出の中で活用できるため、実質的な家計補助にもなり得ます。
とくに物価上昇が続く昨今においては、「現物価で使える」優待の価値が相対的に高まりやすく、インフレ耐性を持つ資産の一部としても位置づけることができます。
しかし一方で、このQUOカード優待が企業にとってコストであるという点には注意が必要です。
QUOカードは、その発行額面分がそのまま販促費や優待コストとして企業の損益に計上されるものであり、財務的には純然たる支出となります。
とくに、業績が悪化している局面では、この優待コストが経営の足かせになるリスクもあるのです。
実際、配当と同様に、株主還元策としての優待制度も、業績次第では減額あるいは廃止の判断がなされる可能性を常にあります。
エフテックにおいても、近年は自動車業界全体がEVシフトや世界的なサプライチェーンの混乱などにより厳しい経営環境にさらされており、必ずしも余裕のある経営状態とは言えない場面もあります。
こうした背景を考慮すると、たとえ現時点では優待制度が安定していても、将来的に制度の見直しや縮小が行われる可能性を完全には否定できません。
それでも、2020年の制度改定によってあえて「長期保有優遇」に舵を切ったという事実は、企業としての株主還元姿勢の強さを示すものでもあります。
短期的な株価対策ではなく、安定的かつ継続的な株主との関係構築を重視する姿勢は、長期投資家にとっては非常に安心感のある要素です。
最終的に、エフテックの株主優待制度は、「手堅く、実用的で、持ち続けるほどに報われる」内容となっており、長期的な資産形成を重視する投資家には十分に検討価値のある銘柄といえます。
ただし、優待の裏側には企業側のコスト負担という現実があることを理解し、制度変更の可能性にも柔軟に備える姿勢が求められます。
そのうえで、「安定利回り」と「生活に役立つ価値」を両立させたい投資家にとっては、非常にバランスの取れた優待銘柄であることは間違いありません。
総合評価
エフテック株式会社は、自動車の足回り部品に特化したメーカーとして長年の実績を誇り、ホンダとの強固な関係を軸にグローバル展開を進めています。
近年では業績の停滞や赤字予想といった課題を抱えつつも、PBRで見た割安感や安定的な配当実績、そして株主優待制度の充実など、長期投資家にとっては注目すべきポイントが複数存在します。
総合的に見れば、エフテックは短期的な値上がり益を期待する銘柄ではありません。
むしろ、現在の割安な株価水準を利用して、じっくりと時間をかけて保有し、配当と優待によるインカムゲインを受け取りながら、業績回復とともに株価の見直しが進むのを待つ「長期・安定志向型」の投資スタイルに適した銘柄です。
将来に向けたリスクとリターンをしっかりと見極めたうえで、「生活の一部に溶け込む優待」と「バリュー投資としての妙味」の両方を活かしたい投資家にとって、エフテックは検討に値する一社であると言えるでしょう。
今後の自動車業界の構造転換や、エフテック自身の経営改革によって株主価値が見直されれば、長期的な報われ方が期待できる投資先になる可能性は十分にあると考えられます。