利確と損切とは何か?長期投資家が実体験をもとに解説

株を買った後、「いつ売るか」は意外と悩ましいテーマです。

特に長期保有を前提にしていると、株価が上がっても「まだ伸びるかも」、下がっても「そのうち戻るだろう」と、売却のタイミングを見失ってしまうこともあります。

でも、利確(利益確定)も損切(損失確定)も、どちらも大切な投資判断。

長く持つことが目的ではなく、「納得のいくリターンを得ること」が長期投資の本来の目的です。

この記事では、私自身の経験も交えながら、長期保有を前提とした利確と損切の考え方、そして判断に迷わないためのマイルールについて、わかりやすく解説していきます。

目次

利確と損切とは?

株式投資をしていると、「利確(りかく)」と「損切(そんぎり)」という言葉をよく耳にしますよね。

どちらも“売る”という行動ではありますが、その目的と状況には大きな違いがあります。

利確(利益確定)とは、株価が上がって含み益が出ているときに、それを現金化するために売却することです。

たとえば、1,000円で買った株が1,500円まで上がったときに売れば、500円分の利益が確定します。

これはいわば「成果を手にする」行為で、気分的にも前向きな売却です。

一方、損切(損失確定)は、買ったときより株価が下がってしまい、これ以上の損失拡大を防ぐためにあえて売る判断のこと。

たとえば、1,000円で買った株が700円まで下がってしまい、「もうこれ以上は戻らないかも」と思ったときに売るケースがこれにあたります。

損を確定させるのは心理的につらい判断ですが、それでも「悪化を最小限に抑える」という点ではとても大事な行動です。

長期保有を前提とした投資でも、この利確と損切の判断は決して無縁ではありません。

放っておくだけで利益が膨らむ、というのは理想ですが、現実はそう単純ではなく、企業の状況も市場も時間とともに変化します。

「売らない理由」だけでなく、「売る判断基準」も、自分なりにしっかり持っておくことが、長期的に資産を増やしていくためのポイントになります。

利確と損切の考え方は長期投資でも重要

長期投資をしていると、「とにかく持ち続ければいい」「いつかは戻るだろう」といった気持ちが強くなりがちです。

たしかに時間を味方につけるのは長期投資の基本ですが、だからといって“完全放置”が正解とは限りません。

長く保有するからこそ、途中で企業の成長性に変化がないか、配当や優待の方針に変化がないかをチェックし、必要ならば売却を検討することも重要です。

利確も損切も、「売る判断」という意味ではどちらも同じくらい大切。

むしろ、売らずにいることでチャンスを逃したり、損失を広げたりするリスクもあります。

投資というのは、買った時点ではスタートにすぎません。

そこからどんな判断を積み重ねていくかで、トータルのリターンが決まってきます。

だからこそ、利確や損切のタイミングについても、明確な基準や自分なりのルールを持つことが、長期投資の成果を安定させる鍵になるのです。

利確のベストタイミングとは?

長期投資をしていると「どのタイミングで売るか」は迷いがちなテーマです。

含み益が出ていても、「もう少し伸びるかも」と欲が出たり、「優待がまだもらえるし…」と理由をつけて先送りしてしまうことも多いですよね。

ただ、ずっと保有することが目的ではない以上、“売る判断”も立派な投資行動の一つです。

ここでは、長期保有を前提にしながらも、利確を検討すべき具体的なタイミングを紹介します。

「株価が上がったから売る」はもったいない

たしかに、株価が大きく上昇すれば一度利確したくなる気持ちは分かります。

ただ、それだけを理由に機械的に売ってしまうのは、長期投資の醍醐味を手放すようなもの。

株価が伸びた背景にあるのが、業績やビジネスモデルの成長であれば、まだその伸びしろが残っている可能性も高いです。

短期的な値動きではなく、その企業が今後どこまで利益を伸ばせるのか、社会の中でどんなポジションを築いていくのか。

そういった視点を持っておくと、「売るべきとき」なのか「まだ保有すべきとき」なのか、見極めやすくなります。

企業の成長性が鈍化したときの判断基準

長期投資家にとってもっとも重視すべきは、「企業が将来にわたって成長を続けられるかどうか」です。

具体的には、売上や営業利益の成長が鈍ってきた、主力事業が頭打ちになってきた、競争環境が厳しくなってきた、といった兆候が見えてきたら注意が必要です。

たとえば、過去5年間で毎年10%以上成長していた企業が、直近の決算でほぼ横ばいに。

しかもそれが一時的な要因ではなく、構造的な問題であるなら、いったん利確を検討するタイミングかもしれません。

成長期待で株価が高めに評価されている銘柄ほど、成長鈍化のダメージは大きくなります。

優待廃止や減配が利確のシグナルになることも

配当利回り株主優待が魅力で保有していた銘柄にとって、これらの「改悪」は明確な判断材料になります。

とくに、業績不振を背景とした優待廃止や減配の場合は、企業の体力や将来性に不安が出ている証拠でもあります。

もちろん、優待がなくなっても企業としての成長余地が残っていれば、保有継続も選択肢ですが、「優待があったから保有していた」銘柄であれば、素直に利確するのが合理的です。

私自身、長年保有していた優待銘柄が廃止を発表した日に、潔く売却してその資金を他に回したことで、結果的にリターンを維持できた経験があります。

他にもっと魅力的な銘柄が出てきたとき

限られた資金の中で投資している以上、どの銘柄に資金を配分するかは常に見直すべきテーマです。

たとえ今の銘柄が利益を出していたとしても、それを上回る魅力的な銘柄が出てきた場合、利確して“資金の乗り換え”を行うのも戦略の一つです。

たとえば、「優待利回りが3%の銘柄を持っていたけれど、新たに見つけた銘柄は業績も良くて、優待+配当で5%の利回りになる」というようなケースでは、切り替えを検討する価値があります。

ポートフォリオ全体を健全に保つには、「過去の自分の選択に縛られない」ことも大切です。

損切の決断はなぜ難しいのか?

投資をしていて最もストレスを感じる瞬間の一つが、「損切」を考えるときかもしれません。

誰でもできるならやりたくないものですし、特に長期投資を前提としていると、「時間を味方につけて待てば戻るかも…」という気持ちが強くなりがちです。

ですが、冷静に考えると、株価が下がっているときこそ、本当にこのまま保有し続けていいのか、自分の投資判断を振り返るチャンスでもあります。

ここでは、なぜ損切が難しいのか、その背景と判断基準を見ていきましょう。

含み損を「いつか戻る」と放置してしまう心理

人間の心理には、「損失回避バイアス」というものがあります。

たとえ同じ金額であっても、利益を得たときの喜びより、損失を出したときの痛みの方が大きく感じる傾向があるんですね。

そのため、含み損が出ていると、「売ったら本当に損が確定してしまう」「もう少し待てば戻るかも」という気持ちが働いて、つい売る決断を先送りしてしまいます。

私も昔、優待目的で購入した銘柄が思うように株価が上がらず、気づけば大きな含み損に育ってしまった…なんて経験があります。

ただ、気をつけたいのは、「戻るかも」という希望に頼っているだけでは、判断が感情的になってしまうこと。

大切なのは、事実ベースで冷静に今の状況を見つめ直すことです。

長期投資でも「撤退ライン」は決めておく

「長期保有を前提にしているから、損切りはしない」——そう決めている人もいますが、それでもやはり“想定外”に備えるラインは持っておいたほうが安心です。

たとえば、「購入時から◯%下がったら見直す」「2期連続で減益なら検討」といった数値的な基準を設けておくと、感情ではなくルールに従って冷静に判断ができます。

これは損切というより、“ポジションの見直し”とも言える行為です。

長期投資は「持ち続ける」ことがゴールではなく、「その企業と一緒に成長していく」ことが目的です。

成長の軌道から外れてしまった企業に固執しても、結果的には資産の目減りにつながってしまいます。

業績悪化やビジネスモデル崩壊は損切のサイン

特に注意が必要なのは、企業の本質的な強みが揺らいでいるケースです。

たとえば、

  • 業績が赤字続きで改善の見込みが見えない
  • 主力事業の市場自体が縮小している
  • 経営陣の迷走が続いている
  • 財務状況が悪化して自己資本比率が急低下している

こういった状況が重なっているときは、「戻る可能性」よりも、「さらに下がるリスク」のほうが高くなってきます。

私が以前保有していた銘柄も、ネット通販の黎明期には注目されていた企業でしたが、競合に押されて収益が悪化。

最初は応援の気持ちで保有していたものの、ついに事業再編の発表とともに優待廃止。株価も大きく下落しました。

結果的に「もっと早く見直すべきだった」と反省することに。

損切は“失敗”ではありません。

むしろ資金を守るため、次の投資に向かうための前向きな行動です。

長期投資だからこそ、ずっと持つためではなく、“持ち続ける価値があるか”を定期的に問い直す姿勢が大切です。

利確・損切で失敗しないためのマイルール

投資に「絶対の正解」はありませんが、判断を迷う場面で支えになるのが“自分なりのルール”です。

特に利確や損切のタイミングは、感情に左右されやすいため、あらかじめ自分の中で基準を作っておくことが、長期投資を続けていくうえで非常に重要です。

ここでは、私が実践している3つのマイルールをご紹介します。

事前に売却基準を明文化しておく

投資する前に、「どうなったら売るか」をある程度決めておくことで、あとから迷わずに済みます。

これは感覚的なものではなく、数字や事実をベースにルールをつくるのがポイントです。

たとえば…

  • 「優待が廃止されたら売却を検討」
  • 「営業利益が2期連続でマイナスなら一度見直す」
  • 「株価が購入時の2倍になったら半分だけ利確」

こういったシンプルな基準でも、あるかないかで大きく違います。

ルールがあると、感情に引っ張られず、あくまで投資のロジックで判断できるようになります。

感情よりも「数字」と「ロジック」で判断

含み益が出ているときは「もっと上がるかも」、含み損が出ているときは「戻るまで我慢」と、つい感情的な判断をしてしまいがちです。

ですが、そうした“期待”に流されるのではなく、「実際に数字としてどうなのか?」という視点を持つことが大切です。

たとえば…

  • 売上や営業利益が前年比で何%成長しているか?
  • 配当や優待の利回りは他銘柄と比べてどうか?
  • 財務体質(自己資本比率や有利子負債)は健全か?

こういった指標を定期的に見直すことで、「なんとなくの不安」や「根拠のない楽観」ではなく、ロジックに基づいた判断ができるようになります。

一部売却という選択肢も持っておく

「売るか・売らないか」の二択ではなく、“一部だけ売る”という柔軟な選択肢を持っておくのも、長期投資家としては有効な戦略です。

たとえば、株価が2倍になった銘柄を半分だけ売って利益を確定し、残りは成長を信じてホールドする。

こうすることで、利益を確保しながら、将来の伸びしろも手放さずに済みます。

また、保有株が減ることでリスク分散にもなり、結果的にポートフォリオ全体のバランスも整いやすくなります。

一部売却は、迷ったときの「中間点」として使える、非常に便利な選択肢です。

利確も損切も、どちらも“未来”を見て行う行動です。

だからこそ、その判断がブレないようにするために、自分なりのルールを作っておくことが、投資を続けるうえでの大きな支えになります。

まとめ

長期保有を前提とした投資スタイルでは、「買う判断」に時間をかける方が多いですが、実はそれ以上に大事なのが「売る判断」です。

利確も損切も、資産を守り、次のチャンスに資金をまわすための重要なアクションです。

利確は、ただ利益が出たから売るのではなく、「企業の成長ストーリーが終わりに近づいたかどうか」が一つのポイント。

逆に損切は、「もう戻る見込みがない」と判断したときに、きっぱり見切る勇気が求められます。

そして何より、自分なりのルールを持つこと。

事前に売却基準を定めておけば、感情に流されることなく、冷静に判断できます。迷ったときは一部売却という柔軟な対応も有効です。

投資は、積み重ねです。

たとえ損切をしても、それが次の大きな利益につながることもあります。重要なのは、ひとつひとつの判断を“納得感”をもって行えるかどうか。

焦らず、ブレずに。利益確定も、損失確定も、「戦略的に動けた」と言える投資家を目指しましょう。

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