デパートの大丸や松坂屋で有名なJ.フロント リテイリング[3086]は、長く持って楽しめる株のひとつです。
株を持っていると、買い物が10%引きになる優待カードがもらえたり、毎年の配当も受け取れたりします。
とくに、長く株を持ち続けると優待の内容がよりお得になる仕組みがあるので、じっくり育てていく投資にぴったりです。
今回はそんなJ.フロント リテイリングの株について、株価や会社の特徴、優待内容などをくわしく紹介していきます。
株式情報
割安度 | 安全度 | 値動き傾向 | ||
PER | PBR | 自己資本比率 | ROE | 信用倍率 |
17倍 | 1.25倍 | 35.2% | 10.5% | 1.02% |
優待&配当 | ||||
総合利回り | 配当利回り | 優待利回り | 権利確定月 | 優待最低取得額 |
2.67% | 2.67% | 10%割引優待買物割引カードのため算出不可 | 2月、8月 | 202,450円 |
編集部おすすめ度 | 理由 |
派手な値上がりは期待しにくいですが、安定した経営としっかりした優待制度が魅力の株です。大丸や松坂屋で使える割引カードは、実際にお買い物する人にとってはとても使い勝手がよく、長く持つほど優待の内容が良くなっていきます。配当も安定しているので、優待と合わせて“持っているだけで得する”タイプの銘柄です。無理なく長く投資を続けたい人には、安心しておすすめできる1株といえます。 |
株主優待情報

株主優待の内容(継続保有期間【3年未満】)
J.フロント リテイリングの株主優待は、全国の大丸や松坂屋で使える「買物割引カード」がもらえる制度です。
対象の店舗やオンラインショップ(DEPACOなど)で使える10%割引は、日用品やコスメの購入にも活用できます。
保有株数や継続保有年数によって年間の割引限度額が変わるため、長期保有するほどお得になる仕組みです。
保有株数 | 年間利用限度額 | 優待内容 |
---|---|---|
100株以上 | 50万円 | 大丸・松坂屋・DEPACO等で10%割引 |
500株以上 | 100万円 | 同上 |
1,000株以上 | 200万円 | 同上 |
2,000株以上 | 300万円 | 同上 |
3,000株以上 | 400万円 | 同上 |
4,000株以上 | 500万円 | 同上 |
株主優待の内容(継続保有期間【3年以上】)
同じ株数を保有していても「3年以上継続保有」している場合は、1年ごとの優待よりも年間の割引限度額が大きくなります。
たとえば100株保有なら通常50万円分の割引対象額ですが、3年以上保有していれば150万円分まで利用できるようになります。
保有株数 | 年間利用限度額 | 優待内容 |
---|---|---|
100株以上 | 150万円 | 大丸・松坂屋・DEPACO等で10%割引 |
500株以上 | 200万円 | 同上 |
1,000株以上 | 300万円 | 同上 |
2,000株以上 | 400万円 | 同上 |
3,000株以上 | 500万円 | 同上 |
4,000株以上 | 600万円 | 同上 |
その他の補足情報
- 割引対象には百貨店実店舗だけでなく、「大丸松坂屋オンラインストア」「DEPACO(デパコ)」も含まれます。
- 文化催事(美術展など)やパルコギャラリーでの無料入場特典あり(一部除外あり)。
- 食料品やセール品など一部割引対象外商品があります。
権利確定日と有効期限
項目 | 内容 |
---|---|
権利確定日 | 毎年2月末日・8月末日 |
有効期限(2月末分) | 毎年5月中旬に送付 → 翌年5月末まで有効 |
有効期限(8月末分) | 新規株主には11月にカード送付(限度額は通常の半額)→ 翌年5月末まで有効 |
継続保有の条件 | 同一株主番号で「2月末時点の株主名簿」に3回以上連続で記載されていること |
会社情報

J.フロント リテイリング株式会社は、2007年の大丸と松坂屋の統合によって誕生した持株会社です。
その本社は東京都中央区日本橋にあり、代表執行役社長は小野圭一氏(2024年より就任)です。
グループ全体では、百貨店事業、ショッピングセンター事業、クレジット・決済、卸売など幅広い事業を展開しています。
百貨店事業の中核は「大丸」と「松坂屋」、若年層をターゲットとしたファッションビル「PARCO」、GINZA SIXなどの複合商業施設も運営しています。
ブランドとしては、
- 大丸・松坂屋百貨店:老舗百貨店として歴史と品質に定評あり
- PARCO:若者向けファッションや文化拠点として人気
- GINZA SIX:高級店舗と文化が融合した大型施設
- Peacock:スーパーマーケット部門
- JFRカード:自社発行のクレジットカードなど
これらを通じ、購買体験の向上から決済まで、一貫したサービス提供を目指しています。
組織体制は持株会社方式を採用しており、各事業子会社が独自性を保ちながら、共通の仕入れや物流などはグループ横断で効率化しています。
最近では、老舗百貨店としての顔にとどまらず、不動産開発やスタートアップ投資、EC・オンライン強化に注力し、“脱百貨店”を掲げた新しい取り組みを進めています。
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株式情報にみる分析
ただし、このような値動きは、裏を返せば「過熱感がない」「安定した地盤がある」とも捉えられます。
実際、この会社は、百貨店という成熟業界に軸足を置きつつも、パルコやGINZA SIXなどの新しい形の商業施設を通じて、都市部の若い層や富裕層を取り込む戦略を展開しています。
また、EC分野やデジタル活用にも力を入れており、DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みも進んでいます。
業績自体も安定しており、2025年2月期の売上高は4,400億円超、営業利益も500億円台と、コロナ禍からの回復も見せています。
こうした数字からも、事業の足腰が強く、極端な赤字や業績悪化とは縁が遠い銘柄であることが分かります。
さらに注目すべきは、この会社の収益構造が“買い物”だけに依存していない点です。
不動産活用やクレジットカード事業、さらには催事や文化施設運営など、複数の収益源を持っており、景気に左右されすぎない仕組みを作ろうとしていることが見て取れます。
これにより、少子高齢化やインフレといった長期的なマクロ変化のなかでも、生き残るための手を打ち続けている会社だと感じます。
こうした取り組みがすぐに株価に反映されるわけではありませんが、長期的にはじわじわと企業価値を押し上げていく力になる可能性があります。
一方で、事業内容やブランド力を考えれば本来もっと評価されても良いと感じる場面もあり、市場の関心が低い分だけ株価の反応が鈍いともいえます。
そのため「爆発的な上昇は見込めないが、じっくり待てる人には報われる可能性がある」という、ある意味で“玄人好み”の銘柄です。
全体として、J.フロント リテイリングは「堅実」「安定」「変化への挑戦」という3つの要素をバランスよく持った会社です。
長期で保有し、優待や配当を楽しみながら、将来の企業成長にも少しずつ期待する――そんなスタンスであれば十分に“買い”の対象になり得ます。
株主優待にみる分析
J.フロント リテイリングの株主優待は、全国にある「大丸」や「松坂屋」で使える10%割引カードがもらえる仕組みです。
この優待は実際に店舗を利用する人にとってはとても実用的で、お金の節約にもつながります。
たとえば、デパ地下でのお買い物や、ちょっと高めの洋服・コスメなどを買うときに使えば、現金の支払いが少なくなります。
ネットショッピングでも使える「DEPACO」にも対応しており、地方在住者でも使い道があります。
さらに注目したいのが、「長く株を持っている人ほどお得になる」という優待制度の仕組みです。
100株を3年以上持ち続けると、10%割引が使える年間の限度額が通常の3倍、つまり150万円分まで広がります。
同じ株数を持っていても、長く保有するだけで受けられるメリットが大きくなるのは、長期投資を続ける上でのモチベーションになります。
優待目当ての短期売買を防ぎ、株主との信頼関係を大切にしている会社だという印象も受けます。
また、割引の対象が「商品だけ」にとどまらないのも、この優待の魅力の一つです。
美術展や文化催事への無料入場特典もあり、買い物だけでなく“ちょっとした娯楽”にも優待が使えるのはポイントが高いです。
年齢を問わず、親子や夫婦でも使える場面が多く、生活の中で自然と使いたくなる優待だといえるでしょう。
優待利回りそのものは、金券のようにわかりやすい「実質◯円相当」では表しにくい部分があります。
ですが、日常的に大丸や松坂屋を利用している人であれば、割引による還元効果はかなり大きくなります。
たとえば、年間50万円の買い物で5万円の割引が受けられるなら、それは実質5万円のキャッシュバックと同じです。
もし長期保有で150万円の枠があるなら、15万円相当の効果になります。これは配当以上の魅力と言っても過言ではありません。
さらに、優待の発行時期や有効期限もはっきりしていて、ルールが明快です。
「いつ買えば優待がもらえるのか」「いつまで使えるのか」といったスケジュールもわかりやすく、優待初心者にも安心です。
一方で、優待の活用には前提として「使えるお店に行ける」「ある程度の買い物をする」という条件があります。
まったく百貨店に行かない人や、通販も使わない人にとっては優待の価値が薄く感じられるかもしれません。
また、セール品や一部商品は割引対象外になることもあるため、注意は必要です。
とはいえ、首都圏や大都市に住んでいて、日常的に百貨店を利用する人にとっては、非常に実用性の高い優待です。
長く保有すればその分だけ優待の価値も上がっていくため、保有を続けるモチベーションとしてもしっかり機能しています。
金銭的な利回りだけでなく、生活に彩りを加えてくれるような「価値ある優待」として、他の銘柄と比べても魅力は十分あるといえます。
総合的に見て、日常で使いこなせる人にとってはかなり優秀な優待銘柄です。
優待目当ての長期保有を考えているなら、十分に“おすすめできる”内容だといえるでしょう。
総合評価
J.フロント リテイリングという会社は、株価だけを見ると大きく成長してきたわけではありません。
過去30年の株価は、上がったり下がったりを繰り返していて、大きな右肩上がりではないからです。
でもその分、急に暴落するようなリスクも少なく、安定した動きとも言えます。
J.フロント リテイリングの株は、「値上がり益を狙う銘柄」というよりも、「持っていること自体に意味がある銘柄」です。
配当と優待の両方を安定して受け取れること、長期保有に向いている仕組みがあることから、コツコツと資産を育てたい人におすすめできる1株です。