
株って短期間で売ったり買ったりすれば、お金が増えるんでしょ?
そんなイメージを持っている人も多いかもしれません。
たしかに、株には短期で売買して利益をねらう方法もありますが、本当に安定してお金を増やしたいなら、じっくりと時間をかける“長期投資”がおすすめです。
このページでは、「長期投資と短期売買はどう違うのか?」をやさしく解説しながら、なぜ長期投資が初心者にも安心で、結果的に成功しやすいのかをわかりやすく紹介していきます。
長期投資と短期売買の基本的な違いとは?
株式投資には、大きく分けて「長期投資」と「短期売買」の2つの方法があります。
どちらも株を売買することには変わりませんが、その目的・やり方・利益の出し方がまったく違います。
ここでは、それぞれの違いを具体的に比べてみましょう。
投資スタイルの定義と目的の違い
長期投資とは、株を買ってから何年も持ち続けて、その会社の成長とともに利益を得る方法です。
たとえば、トヨタやユニクロのような有名企業の株を買って、「この会社は今後も伸びそうだから、10年くらい応援しながら見守ろう」と考えるようなやり方です。
目的は、会社が成長していくことで株の価値(株価)や配当金が増えるのをじっくり待つことです。
まるで果物の木を植えて、毎年実がなるのを楽しみにするようなものです。
一方、短期売買は、株を短い期間で売り買いして、価格の差でもうけを出そうとする方法です。
たとえば「今日1,000円で買った株が明日1,050円になったら売って、50円もうけよう」といったスタイルです。
目的は、株価の小さな変動をすばやくとらえて、回数をこなして利益を積み上げることです。
売買頻度と保有期間の違い
長期投資では、売買の回数は少なく、たとえば「10年に1度くらいしか売らない」こともあります。
株を買ったら、その会社の成長を信じて、景気が悪くてもがまんして持ち続けます。
たとえば、10年前に任天堂の株を買ってずっと持っていた人は、株価が何倍にもなっていたかもしれません。
これは「じっくり待ったからこそ得られる利益」です。
短期売買はまったく逆で、1日に何回も売買する人もいます。
たとえば「朝に買って、昼に売る」とか「週の始めに買って、週末に売る」など、株を持っている期間がとても短いです。
株価は毎日変わるので、その一時的な動きを読み取ってすぐ行動できる人に向いていますが、間違えればすぐに損をすることもあります。
利益の出し方と考え方の違い
長期投資では、利益の出し方は3つあります。
- 株価の上昇:買ったときより高くなれば、それだけで売ったときに利益になります。たとえば1株1,000円で買った株が10年後に3,000円になっていたら、2,000円の利益です。
- 配当金:企業の利益の一部を、株を持っている人に「お礼」としてお金で配ってくれる制度。たとえば年間で1株につき50円の配当が10年続けば、それだけで500円もらえる計算です。
- 株主優待:企業によっては、買い物券や商品をもらえることもあります。長く持っている人の方が優待内容がよくなる会社もあります。
これに対して短期売買では、基本的に「安く買って高く売る」だけです。
配当金や優待は狙っていません。1回あたりの利益は小さいですが、「1日に何回も取引してトータルで利益を出す」ことを目指します。
ただし、予想と逆に動いたらすぐ損につながるので、正確な判断力が求められます。
なぜ長期投資が安定的なのか?

投資と聞くと「お金が増えるか減るかわからない、こわいもの」というイメージを持っている人もいるかもしれません。
でも、長期投資は、短期間で売り買いをくり返すよりも、落ち着いてじっくりと資産を増やしていける方法です。
では、なぜ長期投資が安定的だといえるのでしょうか?3つの理由を紹介します。
複利の力を活かせる
まずは「複利(ふくり)」の力を使えることです。
これは、増えたお金がさらにお金を生む仕組みのことです。
たとえば、100万円を年5%の利回りで10年間運用した場合、単純に毎年5万円ずつ増えるだけではなく、「増えた分にもまた利息がついていく」ので、結果的に10年後には約162万円になります。(=元本100万円 × (1.05)^10)
これは「雪だるま」のようなものです。
最初は小さくても、転がしていくうちにどんどん大きくなる。長く投資を続ければ続けるほど、この効果は大きくなります。
短期売買では、株をすぐに売ってしまうため、この「複利の力」をじゅうぶんに活かせません。
短期的な価格変動に惑わされない
株の価格(株価)は、毎日変わります。たとえばニュースで「円高が進んだ」や「○○社が不正をしていた」などが出ると、一時的に株価が下がることがあります。
でも、長期投資をしている人は、「今日下がったからといって、すぐに売る」ようなことはしません。
むしろ、「一時的に安くなっている今こそ買い時かもしれない」と考えることもあります。
つまり、長期投資では目先の上下(ジェットコースターのような動き)にいちいち振り回されずにすむのです。
時間がリスクを吸収してくれる
株には「リスク=値段が下がる可能性」があります。
でも、長く持ち続けることで、そのリスクはだんだん小さくなるという考え方があります。
たとえば、1年間のあいだに株価が10%下がることもあるでしょう。
でも、10年のあいだに見れば、景気が悪くなる年もあればよくなる年もあり、全体としては株価が上がっていることが多いのです。
実際、アメリカのS&P500という代表的な株価指数では、「15年以上保有した人のほとんどがプラスになっている」というデータもあります。
つまり、長い時間をかけることで、短期的な損失の可能性をやわらげることができるのです。
長期投資のメリット
長期投資には、「時間をかけてじっくり育てる」という特徴があります。
まるで木を植えて育てるように、こつこつとお金を増やす仕組みです。
ここでは、長期投資ならではの大きな3つのメリットを紹介します。
売買手数料や税金の負担が少ない
株を売買するときには、「売買手数料(ばいばいてすうりょう)」という費用がかかります。
また、株を売って利益が出ると、その利益に対して「税金」もかかります(日本では利益の約20%が税金として引かれます)。
たとえば、短期売買で月に10回取引する人と、長期投資で年に1回しか取引しない人とでは、年間でかかる手数料の回数がぜんぜん違いますよね。
- 短期売買:月10回 × 年12か月=年間120回の手数料+税金がたくさん発生
- 長期投資:1年に1回の売買なら、手数料も税金も最小限
つまり、長期投資はムダなコストが少なく、お金が減りにくいというメリットがあるのです。
決算やファンダメンタルズ分析が活かせる
「ファンダメンタルズ分析(ぶんせき)」というのは、その会社がどれだけ利益を出しているか、どんなビジネスをしているかを調べて、投資するかどうかを考えるやり方です。
たとえば、会社が出している「決算報告書」を見て、売上や利益が年々増えている企業なら、「これからも成長しそうだな」と判断できます。
長期投資では、このような“会社の中身”をしっかり見て、将来性がある企業をじっくり応援するというスタイルがとても合っています。
逆に、短期売買では「今日の株価が上がるか下がるか」を予想するので、こういった会社の本質を見るよりもチャート分析を優先する傾向があります。
配当や株主優待が積み上がる
長期投資のもうひとつの大きなメリットは、「配当金(はいとうきん)」や「株主優待」をもらえるチャンスがふえることです。
【配当金とは?】
会社が利益を出したとき、その一部を株主にお礼として分けてくれるお金のことです。
たとえば、年間で1株あたり50円の配当金が出る会社の株を100株持っていたら、1年で5,000円もらえる計算です。
これを10年間もらえば、50,000円の利益。これだけでも大きいですね。
【株主優待とは?】
お店の商品券や割引券、会社の商品などがもらえるしくみです。たとえば、
- マクドナルド → ハンバーガーの無料券
- イオン → 買い物割引のカード
- サンリオ → 入場チケットやグッズ
などがあります。長く持っていると、優待内容がグレードアップする会社もあるので、「持ち続けるほどおトク」になるのが魅力です。
短期売買に潜むリスクと難しさ

短期間で売ったり買ったりして利益を出す「短期売買」は、うまくいけばすぐにお金が増えるように思えますが、実はたくさんのリスクと難しさがあります。
「なんとなく株価が上がりそうだから買う」といった軽い気持ちでは、すぐに損をしてしまう世界でもあります。
ここでは、短期売買がなぜ難しいのか、具体的に解説していきます。
相場の予測は非常に難しい
株の価格(相場)は、毎日たくさんのニュースや人々の行動によって変わります。
たとえば、
- 「社長が辞めた」
- 「円安が進んだ」
- 「災害が起きた」
- 「SNSでうわさが広まった」
こういった出来事ひとつで、株価が急に下がったり上がったりします。
短期売買では、こうした変化を予測して動かないといけませんが、実際はプロでも100%当てることはできません。
たとえば、朝に「この株は絶対上がる!」と思って買っても、お昼に悪いニュースが出て、急に10%下がって損してしまうこともあります。
「株価を短期間で当て続けるのは、天気を1週間分ずっと当てるよりも難しい」と言われるほどです。
手数料と税金で利益が目減りしやすい
短期売買は、売買の回数が多い=そのぶん費用もかかるということを忘れてはいけません。
たとえば…
- 売るたびに「手数料」がかかる(証券会社に支払うお金)
- 利益が出るたびに「税金(約20%)」が引かれる
仮に1万円の利益が出たとしても、税金で約2,000円、手数料で数百円が引かれ、実際に手元に残るのは7,000円ちょっとだったりします。
これを1日に何度もくり返していると、思ったほどお金が増えていかないこともよくあります。
さらに、失敗して損した場合でも、手数料や税金は関係なくかかってしまうのが辛いところです。
精神的ストレスが大きい
短期売買をする人の多くは、1日中パソコンやスマホで株価の変動をチェックしています。
- 「さっき買った株が下がった!」
- 「今売れば利益が出るけど、もう少し待てばもっと上がるかも…」
- 「思った方向と逆に動いた…!」
こうした判断のくり返しが、大きなプレッシャーやストレスになります。
しかも、1回のミスで何万円もの損を出すこともあるので、集中力や判断力、心の余裕がないと冷静に取引できません。
実際、株の世界では「感情的になって売買すると負けやすい」とよく言われます。
短期売買を続けるには、メンタルの強さと常に冷静な判断力が必要になるのです。
長期投資で成功するためのポイント
長期投資は「買って終わり」ではありません。長く持ち続けるからこそ、
やっておくと安心できるコツがあります。ここでは、長期投資で失敗しないために知っておきたい3つのポイントを紹介します。
分散投資でリスクを抑える
「分散投資(ぶんさんとうし)」とは、いろいろな会社の株に分けて投資することです。
たとえば、100万円全部を1社の株に使うのではなく、
- トヨタ:30万円
- 任天堂:30万円
- 食品会社:40万円
のようにいくつかの分野に分けておくと、どれかが下がっても他でカバーできます。
これは、「卵を1つのかごに入れない」という有名なたとえ話と同じです。
1つの会社に全部かけると、その会社がこけたときに全部損してしまいます。
リスクを減らすには、複数の会社に投資するのがコツです。
良い銘柄を見極めて持ち続ける
長期投資では、「今人気の株」ではなく、10年後、20年後も安定して活躍していそうな会社を選ぶことが大切です。
たとえば、
- 毎年売上が増えている
- 利益をきちんと出している
- 借金が少ない
- 社会の役に立つサービスをしている
こういったしっかりした会社の株を買って、ずっと持ち続けることで大きな利益になります。
逆に、短期的に話題になっているだけの企業は、ブームが去るとすぐに株価が下がってしまうこともあります。
ニュースに一喜一憂しない姿勢を持つ
長期投資では、毎日の株価やニュースにふり回されすぎないことが大事です。
たとえば、今日のニュースで株価が少し下がったからといって、すぐに売ってしまうのはもったいない行動です。
大切なのは、会社の本当の価値を信じて持ち続けること。
もちろん、大きな事件や経営悪化のニュースには注意が必要ですが、基本的には「上がった・下がった」に一喜一憂せず、冷静に見守る心構えが必要です。
どんな人に長期投資は向いている?
短期売買は、時間・知識・精神力が必要で、忙しい人や投資に慣れていない人には難しいかもしれません。
それに対して、長期投資はマイペースでじっくり資産を増やしていきたい人にぴったりです。
では、どんな人が長期投資に向いているのでしょうか?
安定的に資産を育てたい人
「お金を増やしたいけど、大きなリスクはこわい」
「できれば着実に、おだやかにふやしていきたい」
そんな人には、少しずつでも資産が大きくなっていく長期投資が合っています。
毎月コツコツ積み立てる方法(積立投資)と合わせれば、より安心して続けられます。
忙しくて日々の相場を追えない人
仕事や勉強で毎日忙しくて、「株価をこまめにチェックできない」という人にも、長期投資はぴったりです。
短期売買のように1日中スマホやパソコンに張り付く必要はなく、年に数回のチェックでOK。
「放っておいても成長していく木を見守る」ような気持ちで取り組めます。
老後資金など中長期の目的がある人
たとえば、
- 将来の教育費をためたい
- 老後に安心して生活できる資金をつくりたい
- 結婚や住宅購入などの資金をじっくり用意したい
こうした5年〜20年先を見すえた目標がある人にとって、長期投資はとても有効です。
時間があるぶん、複利や配当の効果も活かしやすくなります。
まとめ
株式投資には「短期売買」と「長期投資」という2つの大きな考え方があります。
短期売買はすばやく利益を出す可能性がある反面、相場の予測が難しく、手数料や税金、精神的な負担も大きいという特徴があります。
それに対して長期投資は、良い会社にじっくりお金を預けて、配当や株価の上昇、優待などで時間をかけて資産を増やしていく方法です。
複利の力や分散投資の効果も活かせるうえに、短期的な値動きにふり回されず、安心感のある投資スタイルといえます。
もちろん、どちらが正解ということはありませんが、投資初心者や忙しい人、長期的な目標を持つ人にとっては、長期投資のほうが無理なく続けやすい選択肢です。
焦らず、地道に。そして自分に合った方法で。
短期の波に飲まれるより、長い時間の流れを味方につけて、コツコツと資産を育てていきましょう。