松竹[9601]は日本の映画や演劇を支える老舗の企業です。
株価の水準や利回りの面では、正直なところ投資としての魅力は高くありません。
しかし、株主になることで映画館のポイントや演劇チケットといった特別な優待を受けられるのが大きな特徴です。
数字のリターンよりも文化体験を大切にしたい人にとっては、長期的に保有する価値がある株と言えるでしょう。
株式情報
割安度 | 安全度 | 値動き傾向 | ||
PER | PBR | 自己資本比率 | ROE | 信用倍率 |
71.3 倍 | 2.16 倍 | 44.5 % | -0.71 % | 0.04 倍 |
優待&配当 | ||||
総合利回り | 配当利回り | 優待利回り | 権利確定月 | 優待最低取得額 |
約 0.20 % | 約 0.20 % | 映画ポイントなど 定量化不可 |
2月、8月 | 約 1,505,000 円 |
編集部おすすめ度 | 理由 |
株価が割高で配当利回りも低いため、資産を効率よく増やしたい投資家にはあまり向きません。しかし、映画館のポイントや演劇チケットといった株主優待は独自の魅力があります。最低取得額は150万円前後と高めですが、日本の文化や芸術を応援しながら自分も楽しみたい人にとっては、他にはない特別な体験を得られる株式です。数字のリターンよりも文化的な価値を重視する人におすすめできます。 |
株主優待情報

株主優待の内容
松竹の株主優待は、映画や演劇を楽しめるチケットやポイントが中心になっています。
映画館で使えるポイントは株数に応じて増えていき、少ない株数でも映画をお得に見られるのが魅力です。
さらに、保有株数が多い方には、歌舞伎や新派などの舞台が見られる演劇チケットも配布されます。
普段はなかなか体験できない日本の伝統芸能や演劇を気軽に楽しめる点は、他の企業の優待にはない特色です。
保有株数 | 映画優待ポイント(6ヶ月) | 月間使用可能ポイント(制限) | 演劇優待チケット(6ヶ月) |
---|---|---|---|
100株以上 | 80ポイント | 40ポイント/月 | — |
200株以上 | 160ポイント | 60ポイント/月 | — |
300株以上 | 200ポイント | 80ポイント/月 | 2枚 |
500株以上 | 280ポイント | 100ポイント/月 | 4枚 |
800株以上 | 400ポイント | 120ポイント/月 | 6枚 |
1,000株以上 | 480ポイント | 140ポイント/月 | 8枚 |
1,500株以上 | 480ポイント | 140ポイント/月 | 12枚 |
2,000株以上 | 480ポイント | 140ポイント/月 | 16枚 |
権利確定日と有効期限
松竹の優待は年2回もらえるのが特徴です。
2月末と8月末の時点で株を持っていれば、映画ポイントや演劇チケットが送られてきます。
ポイントには利用できる期間が決まっていて、半年ごとに区切られているので注意が必要です。
権利確定月
年2回:2月末日、8月末日
優待ポイントの有効期間
- 2月末確定分 → 6月~11月まで
- 8月末確定分 → 12月~翌年5月まで
演劇チケットについて
演劇優待は保有株数に応じてもらえます。
劇場の公演を対象にしていて、時期によっては抽選招待方式になる場合もあります。ますので、ご自身の保有記録を確認することが大切ですね。
会社情報

松竹株式会社は、1895年に京都で創業された日本の老舗のエンターテインメント企業です。
映画や演劇、歌舞伎といった「物語」を通じて、人々に感動や気づきを届けることを大切にしています。
本社は東京都中央区築地にあり、資本金は約330億円、連結売上高は約503億円(2024年2月時点)です。
従業員数は単体で約601名となっています。
松竹の主な事業は、映像事業、演劇事業、不動産事業、そしてその他の関連事業の4つです。
映像事業では、映画やアニメ、テレビドラマの制作・配給・宣伝、映画館の運営、ソフト販売、配信やテレビ放送などの二次利用ビジネスも展開しています。
演劇事業は、特に歌舞伎の企画・制作・興行が有名ですが、一般演劇のプロデュースや直営劇場の運営(歌舞伎座、新橋演舞場、大阪松竹座、京都南座など)も行っています。
舞台のライツや関連イベント、俳優のマネジメントにも力を入れています。
不動産事業では、ビルの賃貸や管理、開発を通じて街づくりにも参加しています。
エリアの活性化にも貢献する姿勢が見られます。
その他の事業分野では、キャラクター商品やグッズの企画・販売、ECサイト「松竹ストア」の運営、イベント・レストラン・駐車場の運営、さらには俳優育成スクールなど幅広く展開しています。
グループ全体は、連結子会社16社と関連会社9社から構成されていて、映画館運営や映像制作、演劇、プロダクション業務など多岐にわたる事業を行っています。
また、BS放送にも参画してきた歴史があり、かつて「BS松竹東急」という形で衛星放送事業にも携わっていましたが、2025年6月にその放送は一旦終了し、その後継として地元ケーブルテレビ「J:COM BS」が放送を継続しています。
松竹は長い歴史を持ちつつ、伝統芸能の歌舞伎から映画、モダンなエンタメ商品、街づくりまで、多角的に「感動と文化」を届ける総合エンターテインメント企業です。
これからも時代に合わせて挑戦を続け、日本文化を世界へ発信する力強さを感じさせます。
編集部からのおすすめ情報
編集部のおすすめ:
株式情報にみる分析
松竹の株価を長い目で見ていくと、安定した成長を続けてきた企業とは言いにくい面があります。
30年チャートを振り返ると、株価は一時的に大きく上下する場面があったものの、全体としては大きな成長軌道を描いてきたわけではありません。
むしろ、他のエンタメ関連株と比べると値動きが重たく、投資家にとっては「資産を増やす」というよりも「文化を支える」という側面を持った株式と言えるでしょう。
指標面では、PERが70倍を超えており、利益に対して株価が非常に高い水準で取引されています。
PERが高いということは、それだけ将来への期待が株価に織り込まれている状態です。
しかし、現在の収益力を考えると、その期待に見合うだけの成長がすぐに実現するかどうかは不透明です。
同時にPBRも2倍を超えており、純資産に比べて株価がやや割高になっている点も気になります。
一方で自己資本比率は40%を超えており、財務基盤は比較的安定しています。
倒産リスクが高いわけではなく、企業としての安全性はある程度担保されています。
しかしROEはマイナスで、株主資本を活かして効率的に利益を上げられていないことを示しています。
投資家からすると、持っていてもリターンが乏しいという印象になりやすいのが実情です。
また、信用倍率が0.04倍と非常に低い点は注目すべきところです。
これは「売り」ポジションが極端に多いことを意味していて、市場全体で松竹株に対してやや悲観的な見方が強いと読み取れます。
短期的な需給の影響で株価が上がりにくい可能性があるため、長期保有を考える投資家にとっても慎重さが求められるポイントです。
配当についても、利回りは0.2%ほどしかなく、株主への還元という意味ではあまり魅力的とは言えません。
配当で安定的にリターンを得たいと考える投資家にとっては物足りない水準です。
株主優待を含めた総合利回りも決して高くないため、利回りを目的にした投資先としては選びにくい面があります。
ただし、松竹には独自の強みがあります。
それは、歌舞伎や演劇といった伝統文化を支える数少ない企業であるという点です。
また、映画館の運営や映像コンテンツの制作など、日本のエンタメ文化の根幹に関わっているため、単純に業績や数字だけでは測れない存在価値を持っています。
この独自性は、長期的に見れば企業価値を下支えする要因になり得ます。
総合的に見ると、株式情報の観点からは投資おすすめ度は低めです。
株価はすでに割高な水準にあり、配当や利回りの面でも大きな魅力は感じられません。
収益力や効率性に課題が残っていることから、長期保有による資産形成という観点ではおすすめしづらい銘柄です。
ただし、文化的な価値や社会的な役割を重視する投資家にとっては、ポートフォリオの一部として持つ意義はあるかもしれません。
このように、純粋な数字から見れば厳しい評価になりますが、文化を支える企業として長期的に応援する投資という考え方も成り立ちます。
数字を重視するか、社会的価値を重視するかで、評価が大きく変わる株と言えるでしょう。
株主優待にみる分析
松竹の株主優待は、映画や演劇を楽しめる内容になっています。
この優待は数字上の利回りにすると高くはありませんが、映画や舞台が好きな人にとっては大きな価値があります。
特に、松竹が運営する映画館や劇場で使えるポイントやチケットをもらえる仕組みは、エンタメに強い企業ならではの特徴です。
優待の内容を詳しく見ると、100株からでも半年ごとに映画を楽しめるポイントがもらえます。
株数が増えるにつれてポイント数も増えていき、500株以上を持つと演劇チケットまで加わります。
これによって、映画だけでなく歌舞伎や舞台も楽しめるようになり、株主であることの特別感が高まります。
他社の優待では食事券や買い物券のように金額で計算できるものが多いですが、松竹の場合は「文化体験」というお金では測りにくい魅力が含まれています。
ただし、数字としての優待利回りを考えると、映画チケットや演劇の価格は人によって利用頻度や感じ方が大きく変わります。
例えば、映画館に毎月通う人なら十分に元を取れると感じるでしょう。
一方で、映画や舞台をほとんど観ない人にとっては、優待を使い切れずに余らせてしまう可能性もあります。
そのため、優待の価値は「どれだけ映画や演劇を楽しむか」に大きく左右されると言えます。
また、権利確定が年2回あることも魅力です。
半年ごとにポイントが付与されるので、優待を待つ楽しみが続きます。
有効期限が半年間に限られているため、計画的に映画館や劇場に足を運ぶ必要がありますが、これは逆に「定期的に文化に触れる習慣」を作るきっかけにもなります。
エンタメを生活の一部に組み込みたい人にとっては、こうした仕組みはプラスに働くでしょう。
長期的な投資の視点で考えると、優待だけを目的に保有するにはややハードルが高い面があります。
最低取得額が150万円前後と高いため、気軽に優待目当てで買うのは難しいのが現実です。
同じ投資額であれば、もっと高い利回りや現金配当を得られる銘柄は多く存在します。
そのため、利回り重視の投資家にとっては松竹の優待はあまりおすすめできません。
しかし、優待の特徴は「数字では測れない価値」にあります。
例えば、歌舞伎座や南座といった伝統ある劇場で公演を観る機会は、普通に生活していたらなかなか得られない特別な体験です。
松竹の株主になれば、そうした日本文化に定期的に触れるチャンスを得られるという点で、他の企業優待と一線を画しています。
これは投資としての金銭的リターンよりも、人生を豊かにする「文化的リターン」を求める人にとって大きな魅力です。
総合的に見ると、松竹の優待は「誰にでもおすすめできるもの」ではありません。
利回りの面では見劣りし、取得金額のハードルも高いため、あくまで映画や舞台に興味がある人向けです。
しかし、もし長期的に松竹の株を持ち続けることで、映画や演劇を定期的に楽しみたいと考えるのであれば、非常に価値のある優待と言えます。
お金を増やすことだけでなく、文化や芸術を応援しながら自分もその恩恵を受けられる、そうした投資スタイルに合う人におすすめできる優待です。
総合評価
数字を重視する人にはおすすめできませんが、映画や演劇を愛し文化を応援する気持ちを持つ人には長期的に保有する意味がある株式だと言えます。
投資家自身が「何を大切にするのか」によって、松竹株の価値は大きく違って見えるでしょう。