岡三証券グループ[8609]は、証券会社として長い歴史を持つ企業です。
全国に支店があり、ネット取引にも対応しています。
株主優待では、証券口座の管理料が無料になる制度を用意しています。
一見するとお得なように見えますが、実際には使いこなすには条件があり、注意が必要です。
また、長期の株価の動きを見ると、大きな成長はあまり期待しにくい状況です。
これから岡三証券の株を買おうか迷っている人に向けて、株価や優待の面からくわしく分析してみました。
株式情報
割安度 | 安全度 | 値動き傾向 | ||
PER | PBR | 自己資本比率 | ROE | 信用倍率 |
– | 0.69倍 | 15.1 % | 5.7% | 0.41% |
優待&配当 | ||||
総合利回り | 配当利回り | 優待利回り | 権利確定月 | 優待最低取得額 |
– | – | 口座管理料無料のため 試算不可 | 随時 | – |
編集部おすすめ度 | 理由 |
長期的に見て株価の成長があまり見込めず、収益性にもやや不安があるため、長期保有を前提とした投資にはおすすめしにくい銘柄です。優待制度は一定のメリットがありますが、岡三証券の口座を日常的に使っていない人にとっては魅力が限定的です。総合的に考えると、今は無理に買わず、他の成長性や安定性のある銘柄を選ぶのがよいでしょう。 |
株主優待情報
岡三証券グループの株主優待は、外国証券取引口座管理料の「管理手数料無料化」という形で提供されます。
これは現金還元や商品券といった分かりやすい優待に比べるとインパクトが薄く感じられるかもしれませんが、長期保有を前提とするプロ目線では次の点で価値があります。
会社情報

岡三証券グループは、お金を預けて運用する仕事をしている会社です。
会社の歴史は古く、創業は大正12年の1923年で、2023年に100周年を迎えました。
2003年には持株会社方式に移行し、岡三証券グループという現在の形になりました。
2006年にはネット取引用の「岡三オンライン証券」を始め、オンラインでもサービスを提供しています。
株や投資信託、債券、外国株、FXといった多様な商品を扱い、対面とオンラインを上手に使い分ける体制です。
会社の中には、投資のアドバイスをする専門家がたくさんいて、お客さんの悩みや希望に合わせて提案をしてくれます。
国内外のマーケット情報を集めるグローバルリサーチセンターもあり、最新情報に基づいた助言を行っています。
また、アセットマネジメント(資産運用)にも力を入れており、投資信託の商品開発や運用で実績をあげています。
外部からの評価も高く、表彰されたこともあります。
支店では、お客さんが直接相談できる「フェイス・トゥ・フェイス」の体制を大切にしています。
社員の声では、「営業力が強い」「商品が豊富」という意見がある一方で、「大手ほどの規模ではない」と感じる声もあります。
まとめると、岡三証券グループは、街の支店とオンラインの両方で投資相談ができ、豊富な運用商品と専門家のアドバイスが特徴です。
長い歴史をもちながら、新しい時代に合わせたオンラインや海外展開も進めています。
大手に比べると規模では劣ることもありますが、その分、個別対応や提案力に力を入れている会社です。
編集部からのおすすめ情報
編集部のおすすめ:
株式情報にみる分析
岡三証券グループの株価チャートを見ると、この30年間で大きな上昇トレンドは見られません。
むしろ1990年代のバブル期以降、長期的には下落基調が続いており、2000年代以降も株価は低迷しがちです。
時折、一時的な反発はあるものの、全体としては上向きとは言いづらい推移です。
こうしたチャートの動きは、企業の業績が安定成長してきたというよりは、むしろ経営や収益構造の改革がなかなか進まず、成長のエンジンが弱い状態であったことを示していると考えられます。
株式指標を見ると、PBR(株価純資産倍率)は低めで、いわゆる「割安株」としての評価を受けていることがわかります。
一方で、PER(株価収益率)は開示がなく、安定した利益が出ていない可能性もあります。
ROE(自己資本利益率)もそれほど高くはなく、企業が資本を効率よく使って利益を生み出す力にはやや物足りなさがあります。
自己資本比率も金融業としてはやや低めで、リスク耐性に強みがあるとは言いにくい数値です。
加えて、信用倍率がかなり低く、信用買い残が少なく売り残が多い、つまり投資家からの人気もあまり高くないことがうかがえます。
このことは、市場からの期待値が低いことを表しています。
また、時価総額も比較的小さめで、証券業界の中でも規模では中堅にとどまっており、大手と比較した場合に成長性や競争力の面で差があると見るべきです。
実際、ネット証券や大手証券会社との競争が厳しくなってきている現在の状況では、岡三証券グループが将来的に大きく飛躍する姿は想像しにくいのが現実です。
これらの点を総合的に考えると、岡三証券グループは現時点で株価が大きく伸びる可能性は低く、長期投資としての魅力はやや乏しいといえます。
もちろん、急な業績回復や経営改善策が出れば株価が反転する可能性はゼロではありません。
ですが、そういった要因に期待して投資するよりは、より安定した収益性や成長性を持つ銘柄に資金を振り分けるほうが、長期保有前提の投資では安全性が高いと考えられます。
このため、現時点では「購入を見送る」という判断が妥当だといえるでしょう。
長期チャートの流れや財務指標の水準、市場からの期待度などを総合的に見たとき、リスクの割にリターンが見合いにくい銘柄といえるからです。
株主優待にみる分析
岡三証券グループの株主優待は、他の企業のように食べ物や日用品、商品券がもらえるようなわかりやすい特典ではありません。
そのかわり、投資に直接かかわるコストが下がる「管理料の無料化」がメインの内容です。
この優待を受けるには、岡三証券に100株以上を預けることが条件になります。
預けているあいだは、口座を使うときにかかる「保護預り口座管理料」や「外国証券取引口座管理料」が無料になります。
この優待の最大の特徴は、「使い続ける限りずっと有効」という点です。
毎年1回だけもらえる優待と違って、長く保有している人ほどお得になる仕組みです。
そのため、何年も岡三証券を使っている長期投資家にとっては、非常にありがたい内容だといえます。
年間の管理料がもし数千円だったとすると、それがずっと無料になるというのは、積み重ねると意外と大きな節約になります。
ただし、この優待は誰でも簡単に使えるというわけではありません。
まず、岡三証券に口座を作らなければなりません。
さらに、優待を受けるためにはその証券口座に実際に株を移して「預けている」状態にする必要があります。
他の証券会社に株を置いたままでは、管理料の無料特典は使えません。
また、この優待の内容はあくまでも「コストを下げる」というものであって、直接的に「何かをもらえる」わけではありません。
そのため、優待目的で株を買う人にとっては少し物足りないと感じるかもしれません。
特に、普段から岡三証券を使っていない人にとっては、口座を作って株を移す手間のわりに、リターンが少ないと感じる可能性もあります。
それでも、長い目で見ていくと、この優待はじんわり効いてくる存在です。
投資にかかる「見えにくいコスト」を減らしてくれるという意味で、堅実な優待制度だと言えるでしょう。
ただし、優待利回りという面ではこの制度は計算できません。
商品券やクオカードのように「金額」が見える形ではないため、優待ランキングなどで上位に入ることはありません。
また、他社と比べたときに、わかりやすい魅力が少ないというのは否めません。
つまり、この優待は「岡三証券を日常的に使っている人」にとっては非常にメリットが大きいですが、「優待だけを目的に買う人」にはあまり向いていないということです。
長期で保有し、証券口座としても岡三証券を活用している場合にこそ、この優待の価値は最大限に発揮されます。
総合評価
岡三証券グループの株について、株価の動きと優待の内容を両方見たうえで、総合的に判断すると「今は買わなくてよい銘柄」と言えます。
投資の選択肢はたくさんありますので、もっと成長が見込める会社や、もっと魅力的な優待がもらえる会社に目を向けたほうがよいと感じます。
特に、長期でじっくり育てていく投資スタイルの人にとっては、将来の伸びしろや安定性を重視したいところです。
その意味で、岡三証券グループの株は「様子見」とするのが自然な判断だと言えるでしょう。