アシックス[7936]は、ランニングシューズやオニツカタイガーのスニーカーでおなじみ。
ここ数年で業績も株価も一気に飛躍し、長期チャートではきれいな右肩上がりを描いている注目のスポーツブランド株です。
一方で、株価指標はやや割高ゾーンに入っており、配当利回りも高くはありません。
この記事では、30年チャートと最新の株式指標、そして直営店やECで使える割引電子チケット型の株主優待をもとに、長期保有目線でアシックス株の魅力と注意点をじっくり掘り下げていきます。
株式情報
| 割安度 | 安全度 | 値動き傾向 | ||
| PER | PBR | 自己資本比率 | ROE | 信用倍率 |
| 29.8倍 | 9.84倍 | 44.9% | 29.15% | 7.89倍 |
| 優待&配当 | ||||
| 総合利回り | 配当利回り | 優待利回り | 権利確定月 | 優待最低取得額 |
| 0.75% | 0.75% | 0.00%(割引券のため概算困難) | 6月・12月 | 374,400円 |
| 編集部おすすめ度 | 理由 |
| 世界的なブランド力と高い成長性を持つ一方、株価指標には割高感があり、配当利回りも控えめな銘柄です。直営店やECで使える割引電子チケット型の優待は、アシックスやオニツカタイガーの製品をよく買う人には非常に魅力的ですが、そうでない人には価値が見えにくい側面もあります。総合的には「スポーツブランドの成長に賭けたい人向けの中リスク・中リターン株」であり、ポートフォリオのメインというよりは、成長枠の一部として慎重に組み入れたい銘柄と評価できます。 |
株主優待情報

アシックスの株主優待は、自社の直営店舗や公式オンラインストアで使える割引電子チケットです。
株主優待の内容
| 株主優待(直営店・EC共通の割引電子チケット) | |||
| 保有株数 | 保有期間 | 内容(直営店用・EC用 各10枚) | 割引率 |
| 100株以上~1,200株未満 | 1年未満 | 株主様ご優待電子チケット 各10枚 | 25%OFF |
| 100株以上~1,200株未満 | 1年以上~3年未満 | 同上 | 30%OFF |
| 100株以上~1,200株未満 | 3年以上 | 同上 | 30%OFF |
| 1,200株以上 | 1年未満/1年以上~3年未満 | 同上 | 30%OFF |
| 1,200株以上 | 3年以上 | 同上 | 40%OFF |
電子チケットは、アシックスの直営店、ウォーキングショップ、キッズショップ、オニツカタイガーなどグループ各ブランドの直営店や一部ECサイトで利用できます。
1枚あたり一定金額までの買い物に使える仕組みで、靴やウエアをまとめて購入する人にとっては実質的な割引額がかなり大きくなるのが特徴です。
権利確定日と有効期限
権利確定月は年2回(6月末・12月末)です。
それぞれの基準日時点で100株以上を保有している株主に対して、数か月後に電子チケットが付与されます。
有効期限は送付時期ごとに異なりますが、おおむね翌年の3月末ごろまで使えるケースが多く、セール時期だけでなく新作モデルの購入にも使いやすい設計です。
長期保有認定は「決算期末と中間期末の株主名簿に、同じ株主番号で連続して記載されること」が条件となっており、1年以上・3年以上持ち続けることで割引率がステップアップしていきます。
会社情報

アシックスは、1949年に神戸で創業したスポーツ用品メーカーをルーツとする企業で、現在は東京証券取引所プライム市場に上場するグローバル企業です。
社名の由来は、ラテン語の「健全な身体に健全な精神が宿る」という言葉で、その理念どおり「スポーツを通じて世界中の人の心と体を健やかにすること」を企業の軸に据えています。
事業の中心はランニングシューズをはじめとした競技用シューズですが、それに加えてトレーニングウエア、ウォーキングシューズ、キッズシューズなど幅広いカテゴリーの商品を展開しています。
ブランドとしては、競技性の高い「ASICS」、ファッション性を前面に出した「Onitsuka Tiger(オニツカタイガー)」、ライフスタイル寄りの「ASICS SportStyle」、ビジネスシーンにも対応したウォーキングラインなど、用途や価格帯の違うラインナップをそろえているのが特徴です。
直営店は日本各地の主要都市だけでなく、アジア、欧州、北米、南米など世界中に展開されており、オニツカタイガーの旗艦店は表参道や上海、パリ・シャンゼリゼ通りなど、ファッションの一等地にも出店しています。
また、直営店だけでなく、百貨店やスポーツ用品店、ECモールなど販売チャネルも多様化しており、最近は自社アプリや会員プログラム「OneASICS」を使ったデジタルマーケティングにも力を入れています。
売上の構成を見ると、すでに海外売上比率が8割以上を占めており、日本発のブランドでありながら、実際の稼ぎ頭は欧米やアジアの市場になっています。
特にランニングカテゴリーとオニツカタイガー事業の成長がめざましく、ここ数年は過去最高売上を更新し続けるなど、成長ステージにある企業と言えます。
一方で、原材料価格や為替レートの変動、世界的な景気後退の影響を受けやすい側面もあり、商品構成や在庫管理、ブランド戦略を常にアップデートし続けることが求められるビジネスモデルです。
総じて、アシックスは「健康」「スポーツ」「ファッション」を軸に、シューズとアパレルを世界規模で展開する企業であり、今後もグローバルブランドとしてのプレゼンス向上が期待されます。
編集部からのおすすめ情報
編集部のおすすめ:
株式情報にみる分析
アシックスの株式を長期目線で見ると、まず目を引くのが30年チャートの力強い右肩上がりです。
長く横ばいが続いた後、ここ数年で一気に株価が伸びており、まさに「ブランドと業績がそろって評価されてきた局面」にあると言えます。
実際に業績も、ランニング需要やオニツカタイガーの好調を背景に売上・利益ともに大きく伸びており、ROEも高水準まで改善していることから、企業としての稼ぐ力はかなり強くなっています。
一方で、その好調さを織り込んだ結果として株価指標はかなり高めの水準にあります。
PERは一般的な日本株の平均より高く、PBRもかなりのプレミアムが乗っている状態で、配当利回りも1%を下回る水準と、インカム目的の投資先としては物足りなさが目立ちます。
自己資本比率は健全で、借金に依存した無理な成長ではない点は安心材料です。
ただし、信用倍率が高めであることから、個人投資家の人気が集中している状態とも言え、相場の地合いが悪化したときには、需給要因から株価が大きく振れやすい点には注意が必要です。
30年チャートを細かく見ると、ここ数年の上昇が非常に急で、途中で何度か大きな押し目も発生しています。
この動きは、基調としては上昇トレンドでありながら、過熱すると一気に調整が入る“ボラティリティの高い成長株”の典型パターンです。
長期投資家の視点から見ると、「将来の成長性に賭けるなら魅力的だが、安全性はあまり大きくない」という立ち位置になります。
今から新規で大きく買いにいくというよりは、すでに保有している人が長期の成長ストーリーを信じて持ち続ける、もしくはスポーツ・スニーカーセクターにある程度リスクを取って投資したい人が、ポートフォリオの一部として組み込むイメージが現実的です。
景気敏感株ほど業績がブレるわけではありませんが、完全なディフェンシブ銘柄とも言い切れないため、「守りの柱」というよりは「成長寄りのサテライト枠」として位置づけるのがバランスのよい使い方だと考えられます。
企業としての魅力や勢いは十分に感じるものの、現在の株価水準では“誰にでも勧められる万能銘柄”というより、ブランドへの共感や成長性を重視する投資家向けの銘柄と言えるでしょう。
優待情報から見る投資おすすめ度と根拠
アシックスの株主優待は、数値上の利回りこそ計算しにくいものの、内容だけを見ると「使う人にとってはかなりお得」なタイプです。
100株から直営店とECサイトで使える25%割引の電子チケットが年2回もらえ、長期保有を続ければ30%、さらに大量保有かつ長期で40%まで割引率が上がるため、もともとアシックスやオニツカタイガーの商品を定価で買っている人にとっては、実質的な節約効果が大きくなります。
たとえば、一足2万円前後のシューズを家族分含めて年に数足買うような家庭であれば、数万円単位の割引が期待でき、配当利回りだけでは見えない「体感利回り」が高い優待と言えます。
また、優待が電子チケットに統一されているため、紙の券をなくす心配がなく、スマホだけで完結できる点も実用的です。
長期保有優遇が設定されているのもポイントで、1年以上・3年以上と持ち続けることで割引率がアップしていきます。
これは企業側が「短期の優待取りではなく、ファンとして長く製品を使ってほしい」というメッセージを出しているとも読める設計で、長期投資と非常に相性の良い制度です。
一方で、優待の価値は「どれだけアシックスの製品を買うか」によって人それぞれ大きく変わります。
ほとんどシューズを買わない人にとっては価値を感じにくく、逆にランニングやウォーキングが趣味で定期的に買い替える人には非常に魅力的になります。
つまり、金券やクオカードのように誰にとっても同じ価値になる優待ではなく、「ライフスタイルが合う人ほどお得になる」尖ったタイプの優待という位置づけです。
最低取得額が約37万円と決して安くはない水準であることも踏まえると、「とりあえず優待だけ試してみたい」というライト層向けというよりは、ある程度アシックスブランドに好感を持っている人向けの銘柄と言えるでしょう。
足元では業績好調を背景に優待内容も拡充されており、直営店・ECともに割引率が引き上げられるなど、株主との関係を大切にする姿勢が見て取れます。
企業規模や財務体質を考えると、すぐに優待廃止となるリスクは高くないと考えられますが、将来的な制度変更の可能性はゼロではないため、「優待が永遠に続くこと」を前提にした無理な投資は避けたいところです。
総合評価
株式面と優待面をあわせて考えると、アシックスは「ブランドの成長に乗りたい人向けの中リスク・中リターン銘柄」という位置づけになります。
業績やROEの伸びを見ると、ここ数年で企業として一段階上のステージに進んでいることは間違いなく、スポーツやスニーカー文化の広がりを背景に、今後も中長期で成長が期待できる企業です。
ただ、その成長性はすでにかなり株価に織り込まれており、配当や優待だけを見た場合の利回りは決して高くありません。
ポートフォリオ全体としては、インフラ系や食品・医薬品などのディフェンシブ銘柄で土台を固めたうえで、その一部にアシックスのような成長銘柄を組み入れる、という使い方が現実的でしょう。
スポーツが好きでブランドにも共感でき、かつ優待をしっかり使い切れる人にとっては、長期で付き合う価値のある銘柄です。
一方、「利回り重視」「下落耐性重視」でポートフォリオを組みたい人にとっては、現時点の株価水準ではややハードルが高い銘柄とも言えます。
今後の成長ストーリーを信じてブランドと一緒に歩んでいきたい人には面白い選択肢ですが、「とにかく堅く増やしたい」という人には別の銘柄を優先した方が安心と言えるでしょう。

