きちりホールディングス[3082]は、「KICHIRI」や「いしがまやハンバーグ」などを展開する外食グループです。
オシャレでくつろげるダイニングやハンバーグ専門店を中心に、都市部の駅前やショッピングモールなどで店舗を広げてきました。
株主優待では、自社グループの店舗で使える食事優待券が年2回もらえ、優待利回りの高さから優待投資家の間でもよく知られている銘柄です。
一方で、株価指標はやや割高寄りで、財務の安全性も飛び抜けて高いわけではありません。
この記事では、株価水準や財務、そして優待内容を総合的にチェックしながら、長期保有と優待活用という視点で、きちりホールディングスへの投資がおすすめできるかどうかを整理していきます。
株式情報
| 割安度 | 安全度 | 値動き傾向 | ||
| PER | PBR | 自己資本比率 | ROE | 信用倍率 |
| 30.1倍 | 5.18倍 | 27.5% | 16.7% | 1.12倍 |
| 優待&配当 | ||||
| 総合利回り | 配当利回り | 優待利回り | 権利確定月 | 優待最低取得額 |
| 約4.0% | 約0.8% | 約3.2% | 6月・12月 | 約93,000円 |
| 編集部おすすめ度 | 理由 |
| 優待利回りが高く、外食好きには魅力的な一方で、株価指標はやや割高で財務も盤石とは言えない中級者向けの優待株です。 外食需要の回復や新規事業の成長で売上と利益は持ち直していますが、景気や物価の影響を受けやすい業種である点は無視できません。長期での大きな値上がりよりも、優待を楽しみながら中長期でゆるやかな成長を期待するスタンスに向いた銘柄といえます。 |
株主優待情報

きちりホールディングスの株主優待は、自社グループ店舗で利用できる額面1,500円分の食事優待券です。
年2回の権利確定があり、保有株数に応じて受け取れる枚数が増えていく設計になっています。
| きちりホールディングスの株主優待(食事優待券) | ||
| 保有株数 | 年2回の付与枚数 | 年間合計金額 |
| 100株以上〜500株未満 | 1枚 × 年2回 | 3,000円相当 |
| 500株以上〜1,000株未満 | 6枚 × 年2回 | 18,000円相当 |
| 1,000株以上 | 13枚 × 年2回 | 39,000円相当 |
| ※500株以上や1,000株以上を一定期間以上継続保有すると、長期優待として追加の優待券がもらえる制度もあります。 | ||
株主優待の内容
優待券は、きちりグループが運営する「KICHIRI」「いしがまやハンバーグ」「igu&peace」などの店舗で食事代として利用できます。
1枚あたり1,500円分としてレジでそのまま使うことができ、複数枚を同時に利用することも可能です。
現金との交換やお釣りは出ませんが、会計金額が優待券の合計額を少し上回るように使うと、無駄なく活用しやすくなります。
女子会や記念日ディナーなど、少し特別な外食シーンと相性の良い店舗が多いため、「年に数回のごほうび外食」をお得に楽しみたい人にとっては使い勝手の良い優待です。
長期保有向けの仕組みとして、一定株数を継続保有している株主には、通常分に加えて長期優待分の優待券が追加で贈られます。
短期売買ではなく、じっくり応援してくれる株主を大切にしたいという会社のメッセージが感じられる内容になっています。
権利確定日と有効期限
権利確定日は毎年6月末日と12月末日です。
この日に100株以上を保有していれば、数か月後に優待券が自宅に送られてきます。
6月権利分は9月ごろ、12月権利分は翌年3月ごろに発送されるスケジュールが一般的です。
有効期限は、おおむね半年から9か月程度に設定されており、例えば「3月発送分はその年の9月末まで」といったイメージです。
届いた優待券には具体的な有効期限が印字されているので、なくさないように保管しつつ、計画的に使っていきたいところです。
会社情報
きちりホールディングス株式会社は、外食レストラン事業を中心に展開する企業で、本社は東京都渋谷区にあります。
関西で生まれたダイニング業態をルーツに、首都圏を含む全国の都市部へ出店を広げてきた企業であり、落ち着いた雰囲気の店づくりにこだわっているのが特徴です。
中核ブランドである「KICHIRI」は、ソファ席や半個室を多く配置したリビングのような空間が強みで、ゆったりと食事や会話を楽しめることから、女子会やデート、ちょっとした会食など、幅広いシーンで利用されています。
「いしがまやハンバーグ」は、店名の通り石窯で焼き上げるハンバーグが看板メニューのレストランです。
ショッピングモール内などに多く出店しており、家族連れでも利用しやすいカジュアルな業態として定着しています。
このほか、遊び心のあるバル業態「igu&peace」や、オムライス・スイーツ系のブランドなども展開しており、店舗の立地や客層に応じてブランドを使い分ける戦略をとっています。
店舗数は、都市型ダイニングとモール・郊外型レストランを合わせて国内でおよそ100店舗規模となっており、規模としては中堅クラスの外食チェーンと言えます。
飲食店の運営にとどまらず、自社の店舗運営ノウハウを活かしたコンサルティングや、採用支援などのDX関連サービスにも取り組んでいます。
たとえば、面接や採用にまつわる業務をオンラインで効率化するツールを提供するなど、外食に限らない分野での収益源を育てようとしています。
コロナ禍では、営業時間の短縮や休業の影響を強く受け、一時的に赤字に転落するなど苦しい時期が続きました。
その期間に、テイクアウトやデリバリー対応、来店人数を制限したうえでのオペレーション改善などを進めてきた結果、足元では売上と利益が回復基調にあります。
とはいえ、外食産業は景気や物価、賃金の動きなどに左右されやすい業界です。
きちりホールディングスも、その波を避けることはできないため、今後も環境変化への対応力や、新業態の開発力が重要になっていくと考えられます。
企業としては、「ホスピタリティあふれる時間を提供すること」をコンセプトに掲げており、単に食事を提供するだけでなく、空間やサービスを通じて特別な体験を届けることを重視しています。
このように、きちりホールディングスは、外食チェーンとしての顔に加えて、新しいサービスやDX事業にも踏み出している、少しチャレンジングな中堅外食グループです。
編集部からのおすすめ情報
編集部のおすすめ:
株式情報にみる分析
きちりホールディングスの株価は、20年チャートで見ると上がったり下がったりを繰り返しながらも、長期ではおおむね横ばいからやや右肩上がりといった動きをしています。
短期間で急騰するような派手さはないものの、コロナ禍の底からは着実に戻してきており、外食需要の回復とともに株価もある程度持ち直している形です。
指標面では、PERはやや高めで、PBRも高水準です。
これは、市場が将来の成長や収益拡大にある程度の期待を込めている状態と言えます。
ROEは高めで、株主から預かったお金を効率良く利益に変えられている点は評価できます。
一方で、自己資本比率はそこまで高くはなく、財務体質が非常に強固という印象ではありません。
景気悪化や原材料価格の急上昇、人件費の増加など、外食企業にありがちな逆風が強まった場合には、利益が大きく振れやすいリスクがあります。
長期投資の観点から見ると、きちりホールディングスは「ディフェンシブな守りの銘柄」というより、「成長への期待をある程度織り込んだ攻め寄りの外食株」です。
安定感だけを求めるのであれば、他にもっと財務が強く、事業が景気に左右されにくい企業もあります。
しかし、外食という分かりやすいビジネスと、DX関連サービスなどの新しい柱を持ち、優待も厚いというバランスを考えると、ポートフォリオの一部として中長期で保有しても面白い存在です。
総合的に見ると、株価だけで大きなキャピタルゲインを狙う銘柄ではなく、優待や配当を受け取りながら、事業の成長をゆっくりと見守るスタンスに向いた中リスク・中リターンタイプの銘柄だと評価できます。
優待情報から見る投資おすすめ度と根拠
優待面から見ると、きちりホールディングスはかなり魅力的です。
100株を保有するだけで、年間3,000円分の食事優待券がもらえるため、優待利回りはざっくり3%台と高水準になります。
配当利回りと合わせると総合利回りはなかなかお得な水準です。
500株や1,000株といったまとまった株数を保有すると、もらえる優待券の枚数が一気に増えるため、家族でよく外食をする人や、KICHIRI系列が特に好きな人にとっては、優待の恩恵がさらに大きくなります。
また、一定期間以上の継続保有で長期優待が上乗せされる仕組みは、短期売買よりも長期保有を重視する投資家にとって嬉しいポイントです。
一方で、この優待をフルに活かせるかどうかは、自分の生活圏に店舗があるかどうかに大きく左右されます。
首都圏や関西圏には店舗が比較的多いものの、地方ではそもそも使えるお店が近くにないケースもあります。
金券ショップで売るという手もありますが、額面より安くなってしまうため、やはり自分で利用できる人ほど満足度が高くなる優待です。
長期的な視点では、会社が優待をどれだけ大切にしているかも重要です。
きちりホールディングスは、優待券をきっかけに店舗に来てもらい、そこでファンになってもらうという考え方を打ち出しており、株主とお客様の両方を兼ねた存在を増やしたいという意図が読み取れます。
外食業界は環境変化が激しいため、将来にわたって優待制度がまったく変わらないと断言することはできませんが、現状の内容は「株主とのつながり」を重視した設計になっているため、すぐに大幅改悪というイメージはあまり強くありません。
総じて、きちりホールディングスの優待は、「お店を日常的に使う人」にとっては非常にコスパの良い優待です。
外食頻度が高く、KICHIRIやいしがまやハンバーグが生活圏にある人なら、長期保有で優待をもらい続ける価値は十分にあると考えられます。
総合評価
株式情報と優待内容の両面から総合的に判断すると、きちりホールディングスは「優待を楽しみながら、中長期で成長を見守るタイプの外食株」です。
財務の安全性や業種の特性を考えると、ポートフォリオの主力となる守りの銘柄にはなりにくいものの、優待利回りの高さと事業の伸びしろを考えれば、楽しみながら保有できる銘柄として一定の魅力があります。
評価としては10段階中6程度で、「外食優待が好き」「KICHIRIをよく利用する」といった投資家には前向きに検討したい一方で、「優待をあまり使わない」「安定性を最優先したい」投資家にとっては無理に組み入れる必要はないポジションです。
少額で100株だけ保有し、優待券をもらいながら様子を見るスタートの仕方が、リスクとリターンのバランスという意味でも現実的な選択肢になるでしょう。

