ペッパーフードサービス[3053]は、「いきなり!ステーキ」などの外食ブランドを展開する企業として知られています。
一時は急成長を遂げたものの、その後の業績悪化や市場環境の変化により、現在は再構築のフェーズにあります。
しかし、株主優待の内容は非常に充実しており、外食系優待の中でも高利回りを誇る魅力的な水準となっています。
本記事では、同社の株式情報と優待制度をもとに、長期保有の視点でペッパーフードサービスの投資価値を詳しく分析。
配当ゼロながらも、優待の実用性や継続性に注目したい“生活に根ざした投資”としての側面を、じっくり掘り下げてご紹介します。
株式情報
割安度 | 安全度 | 値動き傾向 | ||
PER | PBR | 自己資本比率 | ROE | 信用倍率 |
240倍 | 4.10倍 | 55.8% | 0.99% | – |
優待&配当 | ||||
総合利回り | 配当利回り | 優待利回り | 権利確定月 | 優待最低取得額 |
5.5% | 0.00% | 5.5% | 6月、12月 | 108,000円 |
編集部おすすめ度 | 理由 |
財務の安定性・株価水準の割安感・優待利回りの高さを評価しつつも、業績回復やROE改善にはまだ時間がかかる可能性が高いため、あくまで「長期保有前提」での投資がおすすめされる銘柄です。 |
会社情報

株式会社ペッパーフードサービスは、東京都墨田区に本社を構える外食産業の企業で、特にステーキ業態を中心としたレストランの運営を行っています。
その創業は1970年に遡り、洋食店「キッチンくに」を開業したのがはじまりです。
その後、1985年に「有限会社くに」として法人化し、1994年には現在の礎ともなる業態「ペッパーランチ」をフランチャイズ形式で展開。
手頃な価格でステーキを楽しめるセルフ調理スタイルが人気を博し、短期間で全国に広まりました。
1995年には「株式会社ペッパーフードサービス」へと組織変更。飲食業界での成長を続けながら、2006年9月に東京証券取引所マザーズ市場へ上場を果たしました。
さらに事業拡大を進め、2017年8月には東証一部、現在はスタンダード市場へ上場しています。
現在の主力ブランドは「いきなり!ステーキ」です。2013年12月に銀座に1号店を出店した同ブランドは、立ち食いスタイルで厚切りステーキを手頃な価格で提供するという新しい飲食体験を打ち出し、話題を集めました。
ピーク時には全国400店舗超まで拡大しましたが、現在は経営の効率化と収益性の向上を目的に再編が進められており、2025年2月末時点では国内175店舗、海外8店舗という規模になっています。
「いきなり!ステーキ」以外にも、炭火焼ステーキを提供する「炭焼ステーキ・くに」、とんかつ業態の「こだわりとんかつ・かつき亭」、2024年に新たに展開を始めたすき焼き専門店「すきはな」など、多様なブランドを保有しています。
現在、「炭焼ステーキ・くに」は3店舗、「かつき亭」は1店舗、「すきはな」は1店舗を展開しており、ステーキ中心の中にも顧客のニーズを反映した新しいチャレンジも垣間見えます。
なお、かつては同社の代表的ブランドであった「ペッパーランチ」は、2020年に事業再編の一環として会社分割され、現在は「ホットパレット」という別会社が運営しています。
この再編により、ペッパーフードサービスは「いきなり!ステーキ」を中心とした業態に経営資源を集中させ、収益改善に注力しています。
事業形態としては、直営店舗の運営が主力で、2024年12月期時点で国内91店舗が直営で運営されています。
フランチャイズ店舗は国内1店舗、海外4店舗となっており、過去のフランチャイズ重視からやや直営重視の方針へと移行しているのが特徴です。
また、委託運営の形態で5店舗を管理しており、多様な運営形態を活用しています。
株主優待情報

株式会社ペッパーフードサービスは、株主の皆様への感謝を込めて、魅力的な株主優待制度を設けています。
以下に、その詳細を具体的にご紹介いたします。
株主優待の内容
同社の株主優待は、保有株式数に応じて、以下のいずれかを選択する形で提供されます。
- 自社商品:同社が厳選した商品セット。
- 優待食事割引券:全国の「いきなりステーキ」などのグループ店舗で利用可能な1枚500円相当の食事割引券。
保有株式数と優待内容
保有株式数 | 優待内容 |
---|---|
500株以上5,000株未満 | 3,000円相当(食事割引券6枚または自社商品) |
5,000株以上10,000株未満 | 6,000円相当(食事割引券12枚または自社商品) |
10,000株以上 | 9,000円相当(食事割引券18枚または自社商品) |
優待を受けるためには、各権利確定月の最終営業日までに株式を保有している必要があります。
権利確定日と発送日
権利確定日、発送日は次の通りです。
権利確定日 | 発送日 |
---|---|
6月末 | 10月下旬頃 |
12月末 | 4月下旬頃 |
優待が利用できるブランド一覧
- いきなり!ステーキ:立ち食いスタイルで厚切りステーキを提供する同社の主力ブランドです。
- 炭焼ステーキくに:炭火焼きのステーキを楽しめる店舗です。
- こだわりとんかつ・かつき亭:厳選された豚肉を使用したとんかつ専門店です。
- すきはな:2024年に新たに展開を始めたすき焼き専門店です。
編集部からのおすすめ情報
編集部のおすすめ:
株式情報にみる分析
ペッパーフードサービスの株式は、短期的な値動きに一喜一憂する銘柄ではなく、長期保有を前提にその企業体質や事業構造の変化、そしてブランド戦略の成否を見極めることが求められる投資対象といえるでしょう。
まず、同社の株価は2013年に立ち上げた「いきなり!ステーキ」が大ブレイクしたことで、2014年〜2017年にかけて急激に上昇しました。
立ち食いステーキという新業態がメディアやSNSで話題を呼び、全国に店舗展開が加速。それに伴い株価も数年で何倍にも跳ね上がり、当時は“成長株”の代表格として多くの個人投資家に注目されました。
しかし、急拡大の裏側では、店舗の収益性や出店ペースの管理に課題があり、需要の飽和、既存店売上の鈍化、人件費の上昇などが重なって、2018年以降は業績と株価がともに下降トレンドに入りました。
その後のコロナウイルスの影響が外食産業全体に打撃を与えたこともあり、株価は一時低迷期に入り、かつての高値からは大きく値を下げています。
ここで注目したいのは、こうした急成長と急降下を経て、現在のペッパーフードサービスが第二創業期ともいえる転換期にあるという点です。
事業の選択と集中が進み、かつての主力だった「ペッパーランチ」はすでに切り離され、現在は「いきなり!ステーキ」に経営資源を集中。直営店舗主体の運営に切り替えることで、出店コストや収益管理をコントロールしやすい体制に移行しています。
ペッパーフードサービスの株式を長期的視点で評価する際には、同社の過去の成長・転換期・財務体質に加えて、現在の時価総額の低さが持つ意味も重視すべきです。
企業価値を図るうえで、時価総額はその会社に対して市場がどれだけの価値をつけているかの指標であり、投資家の期待値の表れでもあります。
現在、同社の時価総額はおよそ100億円と、上場企業の中でもかなり小規模な水準にとどまっています。これはつまり、成長性や収益力、ブランド価値に対する市場の評価が非常に抑えられている状態にあるということです。
その一方で、ペッパーフードサービスの自己資本比率は高水準を維持しており、企業の財務基盤としては一定の安定性を確保しています。
自己資本比率が高いということは、返済義務のある負債に過度に依存していないことを意味し、万が一の経営不振時にも持ちこたえる体力があるとも言えます。
とはいえ、時価総額の低さは、株価の変動リスクが相対的に高くなりやすいという側面も持ちます。
機関投資家の参入が少なく、流動性も限定されるため、短期的な売買や投資家心理の変化によって株価が大きく上下する可能性もあります。
このような環境では、短期での値上がり益を狙った投資よりも、事業の中長期的な再成長やブランド価値の見直しを待つスタンスがより現実的です。
企業再編やコスト構造の見直し、新業態「すきはな」の投入など、近年の取り組みを見る限り、同社は単なる飲食店チェーンから脱却し、収益構造を変えていく過程にあります。
このようなタイミングで株価が割安な水準にあるということは、もし業績が持ち直し、利益水準やブランド認知が回復すれば、株価の見直しが起こる余地もあるということを示唆しています。
結論として、ペッパーフードサービスの株式は、現時点では「高い成長性」や「安定配当」を期待して購入する銘柄ではなく、むしろ“再建と再成長の余地を持つ回復株”として長期で見守るスタンスに適しています。
財務健全性がある程度維持されており、優待制度も充実していることから、優待を受けながら数年単位で企業体質の改善を期待できるという点で、リスクを理解した上での長期投資先として検討に値すると言えるでしょう。
株主優待にみる分析
ペッパーフードサービスの株主優待制度は、個人投資家にとって「実利を感じやすい優待銘柄」として一定の魅力を持ちつつも、注意深く見守るべき点もある、いわば“メリットとリスクが共存する優待”です。
そのおすすめ度は、長期保有を前提としたスタンスであれば「中程度以上の評価」が妥当と考えられます。
まず評価すべきは、優待内容の「実用性」と「還元率の高さ」です。同社は、年に2回(6月末・12月末)500株以上の株主に対して、年間6,000円相当の優待食事割引券または自社商品を提供しています。
現在の株価水準を前提にすると、高い優待利回りのため、配当がない中でも実質的な株主還元としては非常に大きなインパクトがあります。
特に「いきなり!ステーキ」などの利用頻度が高い方にとっては、家計に直結する形で優待の恩恵を実感できるのは間違いありません。
また、注目すべきは2024年に実施された優待制度の「拡充」です。
それまで年1回の実施だった優待が年2回に増え、加えて食事券と自社商品の選択制も導入されました。
これは、外食をしづらい地域に住む株主や、ライフスタイルに合わせて優待を選びたい層にとって、大きな改善点といえるでしょう。
このように、優待内容の「アップデート」が続いていることは、企業として株主との関係性を重視している姿勢の表れです。
一方で、注意すべき点もあります。過去に優待内容の変更を行っているという事実自体が、ポジティブにもネガティブにも働き得る要素です。
今回のように「拡充」であれば歓迎されますが、今後業績が悪化した場合には「廃止」や「縮小」の方向に転じる可能性も否定できません。
なぜなら、同社の現状は利益体質がまだ確立されておらず、ROE(自己資本利益率)が極めて低い水準にとどまっているからです。
つまり、会社としては収益面の余裕があるわけではなく、優待維持はある種の“戦略的負担”でもあります。
加えて、時価総額が小さく、安定した収益源が限られているという点もリスク要因となります。
事業環境の変化やコスト上昇、ブランド力の低下などがあった場合に、優待制度の見直しに踏み切らざるを得ない状況になる可能性もあることは念頭に置くべきです。
つまり、優待の継続性には一定の不確実性があるということです。
それでも、過去には厳しい業績局面があっても優待を廃止せず、むしろ内容を拡充してきた実績があることは、個人株主を重視する企業姿勢として高く評価できます。
実際、優待がなければ見向きもされない株式であることを会社側も認識しており、その分、制度の安定性を保つことに一定の覚悟があるとも読み取れます。
総合的に見ると、ペッパーフードサービスの株主優待は「短期での利回り重視」よりも、「長期的に生活の中で活用し、企業の再生を応援しながら享受する」スタイルの投資家に向いています。
安定配当がない銘柄でありながら、外食系優待として実利をしっかり享受できる数少ない存在であり、ポートフォリオの中に一つ“楽しめる優待銘柄”を持ちたい投資家には十分おすすめできる水準です。
ただし、優待の維持には業績回復が前提になることを忘れず、今後の事業構造の変化や店舗展開の方向性には継続的なウォッチが必要です。
総合評価
ペッパーフードサービス(3053)の株式は、財務体質、将来性、優待制度の3点から長期投資対象としての価値を多角的に評価すべき銘柄です。
総括すると、ペッパーフードサービスの株式は、財務の安定性・株価水準の割安感・優待利回りの高さを評価しつつも、業績回復やROE改善にはまだ時間がかかる可能性が高いため、あくまで「長期保有前提」での投資がおすすめされる銘柄です。
日々の値動きに左右されず、優待を楽しみながら同社の成長をゆっくりと応援できる投資家にとっては、生活に彩りを添える“優待株らしい優待株”と言えるでしょう。
特に、外食優待を重視する個人投資家にとっては、価格的にも入りやすく、継続保有でのリターンを実感しやすい好銘柄の一つです。