長期投資を考えるうえで、「安定した事業」「堅実な財務体質」「魅力的な株主優待」の3つがそろっている銘柄は、なかなか貴重な存在です。
今回ご紹介するヒューリック[3003]は、不動産業という一見リスクのありそうな業種に属しながらも、都心の一等地という強力な資産を活かし、安定成長を続けてきた注目企業のひとつです。
株価は過去30年で大きな波を経験しながらも、全体としては右肩上がり。さらに、株主優待では人気のカタログギフトを毎年提供し、長期保有者には特典が増えるという魅力的な仕組みも整っています。
本記事では、ヒューリックの最新株価情報から事業内容、そして投資おすすめ度に至るまで、長期保有を前提とした視点でわかりやすく解説していきます。
「長く持って安心できる銘柄を探している」「優待も楽しみながら資産形成をしたい」そんな方には、きっと参考になるはずです。
株式情報
割安度 | 安全度 | 値動き傾向 | ||
PER | PBR | 自己資本比率 | ROE | 信用倍率 |
10.4倍 | 1.36倍 | 27.3% | 12.80% | 0.78倍 |
優待&配当 | ||||
総合利回り | 配当利回り | 優待利回り | 権利確定月 | 優待最低取得額1 |
4.52% | 3.84% | 0.68% | 12月 | 444,750円 |
- 最低300株 ↩︎
編集部おすすめ度 | 理由 |
長く持ち続けるのに向いている銘柄といえます。急に大きく値上がりするような“派手な銘柄”ではありませんが、「安心して長く持てる」「配当や優待を楽しみながら資産を育てられる」タイプの銘柄です。 |
会社情報

ヒューリック株式会社は、東京都中央区に本社を構える不動産会社です。
1957年に「日本橋興業」という名前で設立され、2007年に社名を「ヒューリック株式会社」に変更しました。
この名前には「Human(人)」「Life(生活)」「Create(創造)」という言葉の頭文字が使われており、人々の暮らしに関わる創造的な企業でありたいという思いが込められています。
ヒューリックは2008年に東京証券取引所の第一部(現在のプライム市場)に上場し、現在では1兆円を超える時価総額を持つ大企業となっています。
主な事業内容は、不動産の「賃貸」「開発」「売買」などです。
特に東京都心の一等地にあるオフィスビルや商業施設を多く保有しており、それらの物件を企業に貸すことで安定した収益を上げています。
特徴的なのは、ヒューリックが保有している物件の多くが「駅から徒歩5分以内」という非常に便利な場所にあることです。
このような立地の良さは、テナント(借り手)にとって大きな魅力となり、高い稼働率を維持することができています。
さらに、ヒューリックは単に建物を保有・賃貸するだけでなく、古くなったビルの建て替えやリニューアルを行う「バリューアップ型の開発」にも力を入れています。
これにより、不動産の価値を維持・向上させ、資産としての強みを保ち続けているのです。
また、高齢化社会に対応するための取り組みも積極的に行っており、介護付き住宅や医療施設といった「高齢者向け施設」の開発・運営も拡大しています。
ここでは、AIやIoTといった新しい技術も取り入れられ、安全で快適な暮らしを支える工夫がなされています。
近年では観光事業にも参入しており、全国にホテルや旅館を展開しています。
代表的なブランドには、「ザ・ゲートホテル」「ビューホテルズ」「東京ベイ舞浜ホテル」などがあり、都市部だけでなくリゾート地でも事業を広げています。
このようにヒューリックは、オフィスビルや商業施設だけでなく、住まいや観光、医療・福祉といった広い分野で不動産を活用し、社会に貢献しています。
単に「土地や建物を持っている会社」ではなく、それらをどう活かすか、どう次の価値につなげるかを常に考えながら事業を展開している点が、同社の大きな強みです。
将来的には、物流施設やデータセンターといった「次世代型の資産」への投資も進めており、時代の変化に合わせた柔軟な経営が期待されています。
都市のインフラを支える存在として、長期的な視点で成長を続ける企業と言えるでしょう。
株主優待情報

ヒューリックは、株主の皆さまへの感謝の気持ちとして、毎年「株主優待制度」を実施しています。この制度では、保有株数や保有期間に応じて、カタログギフトが贈られます。
株主優待の内容
毎年12月31日現在の株主名簿に記載されている3単元(300株)以上を保有されている株主が対象です。
保有株数 | 保有期間 | 優待内容 |
---|---|---|
300株以上 | 3年未満 | 3,000円相当のグルメカタログギフトから1点選択 |
300株以上 | 3年以上継続保有 | 3,000円相当のグルメカタログギフトから2点(合計6,000円相当)選択 |
ヒューリックは、2025年12月31日を基準日とする株主優待制度の変更を発表しました。この変更は、2026年2月下旬から3月上旬にかけて発送される優待から適用されます。
2025年12月以降の変更点
保有株数 | 保有期間 | 優待内容 |
---|---|---|
300株以上 | 3年未満 | 優待なし |
300株以上 | 3年以上継続保有 | 6,000円相当のカタログギフト |
これまで、3年以上継続して300株以上を保有している株主には、6,000円相当のカタログギフトが贈呈されていました。今回の変更により、この継続保有期間が2年以上に短縮されます。
一方、3年未満の保有期間で300株以上を保有していた株主に対する3,000円相当のカタログギフトの贈呈は廃止されます。
ヒューリック株式会社の株主優待制度は、長期的に株式を保有することで、より充実した特典を受けることができる仕組みとなっていますね。
優待内容の詳細
カタログギフトには、全国各地の美味しい食べ物や特産品が掲載されています。
例えば、高級和牛や新鮮な海産物、有名店のスイーツなど、多彩な商品からお好みのものを選ぶことができます。
また、社会貢献を希望される方のために、カタログ内には「あしなが育英会」への寄付項目も設けられています。
編集部からのおすすめ情報
編集部のおすすめ:
株式情報にみる分析
ヒューリック株式会社の株価の動きを30年スパンで見ると、大きく株価が成長した時期と、大きく値を下げたタイミングがはっきりと存在しています。
特に注目すべきは、リーマンショック前後(2007年〜2009年)、アベノミクス相場(2012年以降)、そして2020年のコロナショックと2022〜2023年の金利上昇局面です。
1989年の上場当初は、不動産バブルの終盤でした。
そのため、上場後しばらくは株価が伸び悩み、バブル崩壊とともに低迷期に入りました。
その後、2007年に東証一部に指定替えされた頃から、業績も安定し株価が上昇を見せ始めますが、すぐにリーマンショック(2008年)の影響を受けて、一時的に大きく下落しています。
これは全世界の金融市場が混乱したタイミングであり、不動産業を中心に株価は全面安となりました。
しかし、その後のヒューリックは堅実な不動産戦略と都心集中の物件取得で、安定成長路線に戻ります。2012年のアベノミクスをきっかけに株価は大きく上昇し、2013年〜2019年にかけては右肩上がりを続けました。
この時期、東京の不動産市況が活況を呈しており、オリンピック需要も加味された追い風がありました。
2020年には新型コロナウイルスの影響で、国内のオフィス需要・観光需要が一時的に落ち込み、株価も大きく調整しました。
しかし、このタイミングでもヒューリックは配当を維持し、優待制度も継続。株主重視の姿勢が変わらなかった点は、長期保有者にとっては安心材料でした。
2022年以降は、日本でも少しずつ金利上昇の話題が出始め、不動産関連株が弱含みました。
とくに、米国の金利上昇が世界の資金の流れに影響を与え、日本の不動産株もその影響を受けやすい状況にあります。
ヒューリックも一時的に株価が下落しましたが、業績自体は堅調で、減配などは行っていません。
このように、長期で見ると、ヒューリックの株価は「一時的な下落はあるものの、全体としては成長している」と言える動きです。
とくに注目したいのは、「景気が悪くなっても会社がブレない」点です。
財務の安定性が高く、PER・PBRも不動産業としては標準的か、やや割安な水準で推移していることが多く、過熱感が少ないのもポイントです。
一方で、
「不動産業には怖さもある」という視点もあります。
不動産価格は市況に大きく左右され、金融環境(特に金利)によって資産価値も大きく変動します。
実際、30年スパンでも3〜4回の大きな調整局面が存在しており、決して“右肩上がり一本調子”ではない点には十分注意が必要です。
結論、ヒューリックは、長期でも投資対象として成り立つ企業です。
ただし、これは「都心不動産の安定性」「会社の堅実な経営」「株主を大切にする姿勢」という前提があるからこそです。
不動産業に対して不安を感じているなら、ヒューリック1社に集中投資するのではなく、ポートフォリオの一部として長期保有し、他業種とも組み合わせて持つことで、リスクを分散するのが理想的です。
株主優待にみる分析
ヒューリックの優待の中心は「カタログギフト」です。
選べる商品もとても幅広くて、和牛やお米、海産物、スイーツ、有名ブランドのお菓子など、「本当にどれにしようか迷うほど」魅力的なものがそろっています。
しかも、ギフトを選ばずに、代わりに「寄付」を選ぶこともでき、社会貢献の気持ちを形にできる仕組みも用意されています。
また、ヒューリックはもともと「配当金」も高めに出している会社なので、優待と配当の両方を合わせると、1年間で受け取れるリターンはとても大きくなります。
こうした“複利”のような効果が、長期で保有することのメリットをさらに高めてくれます。
一方で、注意点もあります。
2025年12月を基準日とする優待からは、制度が少し変わります。
これまでは、「3年未満の保有」でも300株あれば3,000円のカタログギフトがもらえましたが、変更後は「2年以上の保有」でないと優待がもらえなくなります。
つまり、「短期間だけ持つ人には優待をあげません。でも、長く応援してくれる人には、今まで通り、あるいはもっと良い優待をお送りしますよ」という方針に変わったのです。
この制度の変更は、逆に言えば「会社が、真剣に長期の株主を大切にしたいと考えている証拠」でもあります。
株主としての姿勢が問われる時代に、こうした長期保有者向けの制度を整える企業は、全体の中でも少数派で、企業としての“誠実さ”がうかがえます。
優待の内容そのものは、物理的な利益としてわかりやすいものですが、実はそれ以上に「企業と投資家の信頼関係」を築く道具でもあります。
ヒューリックの優待制度は、その信頼関係を長く続けたいと思わせてくれる、そんな仕組みになっているのです。
そのため、ヒューリックの株主優待制度は、「短期的なもうけ」というよりも、「時間をかけて信頼を積み重ねていくタイプの投資」に向いています。
学校の勉強や習い事でも、コツコツ続けることで成果が出るのと同じように、この会社の株も、時間をかけてこそ価値が出てくるタイプのものです。
以上のように、ヒューリックの株主優待制度は、長期投資にとても向いています。
毎年の楽しみになるだけでなく、配当と合わせて資産をじっくり育てる手助けをしてくれる、頼れる存在といえるでしょう。
長く投資を続けたいと考える人にとっては、強くおすすめできる企業のひとつです。
総合評価
ヒューリック株式会社は、「株の値動き(株価)」と「株主へのサービス(優待)」の両方の面から見て、長く持ち続けるのに向いている銘柄といえます。
まず株価についてですが、ヒューリックは1989年に上場し、これまで30年以上にわたって企業として成長してきました。
もちろん途中には、リーマンショックやコロナショックといった世界的な問題の影響で株価が下がる場面もありましたが、そういった厳しい時期を乗り越えながら、全体としては右肩上がりの成長を見せています。
ヒューリックは、急に大きく値上がりするような“派手な銘柄”ではありませんが、「安心して長く持てる」「配当や優待を楽しみながら資産を育てられる」タイプの銘柄です。
不動産業には金利や景気に左右されやすいというリスクもありますが、ヒューリックはそれを都心の強い物件と安定した経営でカバーしています。
つまり、コツコツと資産を増やしたい人にとって、とてもおすすめできる企業です。
将来のために長期で投資を考えているなら、「ヒューリックをポートフォリオの一部に加えておく」ことは、しっかりした選択肢になるでしょう。
「派手さ」ではなく「安定」と「信頼」で勝負している、そんな株だといえます。